出版社内容情報
不幸な少年時代を送った青年フェリックスは,はるかに年上の伯爵夫人に熱烈な恋心を抱く.夫人はみたされぬ結婚生活に悩みながらも,あくまで母のような,精神的な愛をもって応えようとする.しかしその心の奥底には,はげしい愛欲が秘められていた…….霊肉の相克に苦しむ人間の姿を,非情な筆致で描きだす恋愛小説の古典.
内容説明
不幸な少年時代を送った青年フェリックスは、はるかに年上の伯爵夫人に熱烈な恋心を抱く。夫人はみたされぬ結婚生活に悩みながらも、あくまで母のような、精神的な愛をもって応えようとする。しかしその心の奥底には、はげしい愛欲が秘められていた…。霊肉の相克に苦しむ人間の姿を、非情な筆致で描きだす恋愛小説の古典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
面白かったです。不幸な少年時代を過ごしたせいか、年上の伯爵夫人に恋心を抱くフェリックス。彼の恋心に精神的愛で応えようとする夫人ですが、心の奥底に激しい欲望を抱いているのを見てしまうと、ただ清らかな布陣に恋した純愛の物語で終わるわけはないと思いました。清らかに見えてどんどん皮肉へと紡がれていくのにハマってしまいます。2023/05/23
みつ
35
これも30年以上昔、新潮文庫で読んだもの。とはいえ「バルザックには珍しい恋愛小説」というくらいの感想しかなかった(有名な作品ではあるが藤原書店の『人間喜劇セレクション』全13巻には含まれていないため、その際には再読の機会なし。)。冒頭ナタリーなる伯爵夫人に宛てた主人公フェリックスの手紙で始まり、その後続く彼が語り手となる本文でも何度もナタリーへの呼びかけが繰り返されるという構成は完全に忘れていた。伯爵夫人アンリエットとのプラトニックな恋愛が詳細を極めた田園風景の中で綴られていくもので、頁を埋め尽くした➡️2024/07/05
meg
24
美しい。2025/02/03
H2A
22
一度挫折し難渋しながらもようやく読了。筋書きの問題だけではなく恋愛にはじまる情念の諸相をあらゆる面から語りつくそうとする「異常な調子の高さ」があって、頁は容易には進まない。荘重で拷問に近いほどの美文だ。クロシュグールドは文学史上もっとも美しい作品舞台で、モルソフ夫人という女性は究極の理想像だろう。頂けない自己憐憫も、終盤の非情な展開で相対化される。テーマを愛に極限した作品としては、楽劇『トリスタンとイゾルデ』ぐらいしか比肩するものが思い浮かばない。名作と言われることに同感。2015/01/21
kaze
15
バルザックらしからぬ繊細で抒情的な風景描写も多くて、あらーなんだか調子狂うわーと思いながら読んでいたのだけれど、モルソーフ夫人の死の場面では胸がいっぱいになってしまった。谷間に満ちている悲しみに私も感染してしまった。というところで、最後のナタリー嬢の手紙ですよ。キター。いや、ほんと、昔の女の話とか告白されても困るねん。死んだ人には勝てないって。この章を書いてくれるところが、バルザックなのよね。2022/07/10