出版社内容情報
いかなる小説,史書もナポレオン帝政時代のフランス社会の実相をこれほどみごとに示してはいない.独裁政治を裏面から支える秘密警察の策謀弾圧,政治裁判とデッチ上げ事件――本書はバルザックの作品中,特に扱われた事件で興味あるものであり,裁判の公平になお疑念のある今日,痛切に訴える問題を含んでいる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
きりぱい
5
荘園管理人のミシューは、仕えていたシムーズ侯爵が処刑されると、後を買い取った共和政府側のマランに仕え、王党派側から白い目で見られていた。亡命中の双子シムーズ兄弟、その従妹ローランスにどうか関わってゆくのか、密偵コランタンの登場、マラン拉致事件発覚と、気付けばミシューともども被告人!コランタンVSローランスや、下巻の裁判が迷走する辺りがいい。ローランスが決戦前夜のナポレオンに特赦を求める光景などは、確かにおお・・となったのだけど、『人間喜劇』中最も美しい場面のひとつとして聞こえているのだそう。へえ・・。2011/01/28
kinka
4
旧体制とナポレオン派との対決は第2ラウンド。警察長官フーシェが糸を引いて奸智が巡り、貴族たちは追い詰められる。そして、ナポレオンの作った法による裁判。法廷・人間ドラマに手に汗握りつつ、背景にある新しい国だとか、制度だとか、社会だとかの威圧感がじりじりと圧し掛かってくる。他でもないナポレオンに「人は国の法律のために死なねばならない」と言わせるバルザックのセンスに戦慄。最終章の畳み方にもため息しか出ない。すげえわ、何でこんなものが書けるんだろう、バルザックおもろい、そして恐ろしい。【ガーディアン必読1000】2016/07/25
takeakisky
0
誰も見た目どおりではないし、口から出る言葉が真実であるかどうか。まあしかし、本当に面白い。ミシュー、ローランス、マルト、シャルジュブーフ侯、コランタン、そしてナポレオン。出てくるすべての人が、そうでなくてはいけないところへ、ぴたりぴたりとはまってゆくような恐ろしい心地のよさ。しかも、確実に読んでいる私よりスケールが大きく、あっと云わされる。またもやバルザックの掌の上でころりころりと転がされる。ツヴァイクでなくてもフーシェについて書きたくなる。結びの蛇と狸の寄合の再現めいたところの面白さったらない。満足。2023/09/15