出版社内容情報
フランス・ロマン主義の父シャトーブリアン(1768‐1848)の名を不朽に伝える2篇である.「アタラ」は新世界アメリカの大自然を背景とするインディアンの悲恋物語であり,「ルネ」は近代的憂鬱を一身に具現する一青年の内的生活の回顧でまた著者の自伝とも称しうるもの.「言葉の魔術師」といわれたほどの絢爛流麗な文章の底には深い寂しさを秘めている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
瓜坊
9
父編『アタラ』子編『ルネ』遠い昔の物語、結ばれない悲恋、近親愛、あれ?スターウォーズのような。さて近代を舞台にした短い小説『ルネ』を読むためにアメリカの大自然の悲恋物語『アタラ』があるように思う。江戸の世話物と明治の恋愛小説のセットと言いましょうか。作者はこの小説の前に共和派から王党派つまり保守に転向したそうで、教会礼賛感は否めないが、自然のままのインディアンも近代的な個人も称えず、されどどちらにも優しいという絶妙さ。後によくいる”近代的喪失者”ルネが至極真当に説教されちゃうと、返す言葉はもうないです。2016/12/14
てれまこし
7
シャトーブリアンというとロマン主義的反動の一典型だと思ってたが、一応デカルト、ヴォルテール風の懐疑主義を一旦はくぐってるらしい。シュレーゲルらと同じく無限への憧れが絶対神への回帰につながったらしい。不倫の恋に高貴な感情を見出す近代的恋愛観であるが、恋愛も一時の感情にすぎないという諦念が、かえって信仰への回帰につながる。ルソー『新エロイーズ』やゲーテ『ウェルテル』のような書簡・日記形式ではないが、秘められた罪の告白という形で開示される点は同じ。近代小説における自我はまず情念と道徳の板挟みとして姿を現わす。2022/06/01
秋津
3
ルネのみ読了。 原文で両方読んでみますか…。2016/11/23
KUMAGAI NAOCO
2
牛肉の最高級部位の名前の語源にもなったシャトーブリアンの代表作。元は「キリスト教真髄」の第3部と第4部を独立させた著書で、ネイティブ・アメリカ人のシャクタスによって語られる「アタラ」と、その養子ルネが独白する「ルネ」の二部作。どちらも近親者間の禁断の愛とキリスト教への帰依がメインであり、特にルネの方は絶望的な孤独の中に終わる感じが辛い。アタラは植民地化される前のアメリカ、ルネは革命後のフランスが舞台だけど、2つ合わせて1つの作品と捉えて一気に読めた。2022/10/24
調“本”薬局問悶堂
2
読むのに時間がかかっちゃった。 欧米の文学って宗教色が強い。 どこかに必ず宗教の色が見えるし、匂いがする。 それは私にとって読むのが難しい。強ければ強いほど。 まして古書で買ったこの本は、漢字も旧字が多いし、かなも昔のまま。読むという行為だけで必死だった。 たまにはこういうのもいいかも。 最近ずっと軽いのばかりだったから。 《2020年6月 登録》2008/01/31
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