出版社内容情報
スペインの片田舎からサラマンカの大学に留学しようと故郷を去ったジル・ブラースが,山賊に捕えられたかと思うと貴婦人と脱出し,巨万の富を集めては一文なしになり,丁稚奉公から大臣秘書等々社会のあらゆる層を浮沈しながら身につけてゆくのは単なる処世術ではない.それゆえにゲーテの「教養小説」に匹敵しうるのである.フランス最初の職業的文士といわれるル・サージュ(1668‐1747)の代表作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
124
このフランス人の作者は17世紀後半生まれ。ルイ14世の時代。この作品が書かれたのは18世紀前半。舞台はスペイン。明らかにスペインのピカレスク小説の影響が感じられる。両親の学が無いが、叔父にそれなりに教育してもらったジル・ブラースは、きちんと勉強をしに旅立つ…が、気の毒なくらいな目にあうのだ。そもそもこんな世間知らずの若者に少なからぬお金をもたせてよくも一人で旅立たせたものだ。追剝ぎ、詐欺、強盗に誘拐され一味にされ、人に仕える身に甘んじる。一巻の終わりでようやく修正がききそうだが、これもどうなることやら。2017/10/19
NAO
58
旅に出たとたん有り金残らず騙し取られて以降、世間知らずの青年時ジル・ブラースの波乱万丈の生涯が始まる。宿の主人も、盗賊も、医者も、みな同じ穴の狢ともいえる悪行非道ぶり。辛辣な風刺が込められたピカレスク小説は、いったいどこへ向かうのだろうか。2017/09/19
takeakisky
1
ジョウゼフ・アンドリュース中、フィールディングが言及するので寄り道。スペインの灼けつく陽射し、乾いた熱風、は無い。出てくる人も、なんだか詰めが甘く、スペイン様のパキパキ感がない。と思えば、作者はフランス人。マカロニウェスタンだ。ジル・ブラースは状況の赴くまま、幾つもの職業を転々とし、幾つもの都市を巡る。なかなか味わいのある挿話も交えつつ、変転が続き、興味深く、飽きさせない。いつも誰かの下に居て誰かを観察する視点の置き方の勝利。この先何が待つかと思うと続きも気になる。面白い。寄り道が長くなるが、次の分冊へ。2023/08/19
無能なガラス屋
0
アランの『幸福論』にて進められていた本の一冊。まさかこれほど面白いとは思わなかったが、良書は良書を呼ぶという私の考えをより裏付ける読書体験になった。悲しいのは、『幸福論』の登録数に対して、この本のそれは約1.6%程であるということだ。これを知り、著者の考えを本当に理解しようとする人の少ないことを惜しむばかりだ。2020/01/25