出版社内容情報
医者や薬剤師のくいものにされ,自分は重病だと堅く信じこんでいる男.若い後妻は財産を手にいれようと夫の死を指折り数えて待っているが…….モリエールは新しい学説や実験を受け入れない医師たちを痛烈に諷刺しながら,歌と踊りをふんだんに盛りこんだ陽気な笑劇を作り上げた.現代もなお上演され続けている名作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
209
1673年初演。モリエール晩年の笑劇。モリエール自身、大の医者嫌いだったようで、本編でも徹底的に当時の医者や医術を揶揄している。新井白石や『和漢三才図会』などでは、ヨーロッパの医学の水準の高さに感嘆しているが、その一方で19世紀にもなお治療法の中心が瀉血(血管を切断して悪い血を出すという治療法。『ボヴァリー夫人』にも見られる)と浣腸であったらしい。また、女中役のトワネットが偽医者に扮するシーンがあるが、ダ・ポンテ原作のモーツアルトのオペラ・ブッファ『コシ・ファン・トゥッテ』が、これを巧みに取り入れている。2015/03/02
のっち♬
110
自身が病気だと思い込んでいる男を弄ぶ医者を風刺した生涯最後の作品。肺病が悪化の一途を辿り死が迫る最中の創作だが、歌と踊りがふんだんに盛り込まれた陽気なファルスで、ツッコミが追いつかない量のボケ倒しがアクティブかつ多彩に盛り込まれている。新学説や進歩を拒む保守的な医者をより苛烈な形で吊し上げ、メタ構造を駆使して誹謗中傷に反駁せんとする怒り、ギクシャクした家庭内不幸、離別を重ねる人間関係など人生の不条理は彼の創作のバイタリティの源泉であり続けた。エンターテイメントに殉じた演劇人の生き様がハードに貫かれた傑作。2023/10/21
フリウリ
11
とんがり帽子と衣服さえあればあなたも医者になれるよ、という医者批判。頑迷な主人、強欲な後妻、純真な娘と恋人、そして賢い女中と協力者、という軽妙かつ安定の布陣で、とてもおもしろいです。図書館で借りましたが、丁寧に消してあるものの、うっすらと赤鉛筆による線の跡がありました。主に医者批判のセリフでしたが、(よくないこととはいえ)どういう人が読み、線を引いたかを想像して、「病は気から」という題名を「買いかぶった」のではないかと思い、ちょっと可笑しくなりました。1673年、モリエールが亡くなった年の作品です。82024/04/04
Nemorální lid
9
「いやいやながら医者にされ」などの戯曲において、作者モリエールは『医学と医者をくり返し槍玉にあげてきた』(解 p.124)のであるが、当著とて例外ではない。『もっともらしい言葉をならべ、効果のない約束をするにすぎない』(p.85)と医者を看破する場面は彼の痛烈なる諷刺が遂に露呈した側面を帯びていると思う。また、「タルチュフ」「守銭奴」のように家の主人が偏重的であるものの、最後には上手く懐柔して喜劇的顛末を迎えるのも、しっかり"市井を描く劇の法則"を守っているのではなかろうか。彼の喜劇はやはりどれも面白い。2019/01/07
ののまる
8
大爆笑。2018/05/25