内容説明
エウリピデスの悲劇『メデイア』では、メデイアは自分の子供を殺したことになっている。果たして本当に自分の子供を殺したのだろうか?メデイアのモノローグを中心に、6人のモノローグ(さまざまな声)で構成されているこの作品で、ヴォルフは新しい「メデイア」を作り出した。誹謗中傷に晒され孤立するメデイアを。そこには、ドイツ統一後、魔女狩りめいた批判や非難の一斉射撃を浴びたヴォルフの姿が二重映しに見えてくる。この作品は1996年に発表された。
著者等紹介
保坂一夫[ホサカカズオ]
1941年生。東京大学文学部独文科卒業。日本大学文理学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なか
1
グラウケとメデイアの関係性が好き。グラウケ視点の章で、「わたしはあの女に騙されていた」「信用ならない」「私を嘲笑っていたに違いない」みたいな感じでメデイアを悪く言っていたグラウケが、すがるように最後「メデイア」と名を呼ぶところが、愛憎や尊敬と失望が入り混じった女の心境を描いていてうまいなーと思う。ギリシア・ローマ神話のメデイアに着想を得ているけれど知らなくても興味深く読める。詩的というか戯曲的な文体ではまる人ははまると思う。2013/02/24
まりこさん
0
神。西洋の古典を再解釈することで、西洋の女性像について考えることができる。 フェミニズム的な論文や作品は嫌いだけど、ヴォルフだけは好き2014/06/03
蝉丸 智丸
0
メデイアの子殺しが歴史上の捏造だとしたら、から出発した作品。構成はお見事だし、ストーリーも巧妙で素晴らしい。でも読後は軽く鬱になる。2011/11/13
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