出版社内容情報
親がけちん坊なばかりに息子は人並みの身だしなみもできず,恋人と一しょになることもできない.しかも彼の父親アルパゴンは年甲斐もなく息子の恋人に想いをかけている.恋愛すれば金がかかるし,それが守銭奴アルパゴンには身を切られるよりもつらい.モリエール(一六二二―七三)の性格喜劇のうちで最も上演回数の多い作品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
382
劇の初演は1668年。日本ではまさに元禄時代。フランス17世紀演劇の今日的な意味を考えれば、史的意義はともかく演劇の内容はよく言えば古典的、見方を変えれば単純さ(例えばシェイクスピア劇と比べると)は否めない。特に本作は主人公アルパゴンの性格造形はともかく、プロットの展開は杜撰であるとさえ評価されかねないだろう。例えば、クレアントとフロジーヌの計略もいつの間にか立ち消えになり、アンセルムの正体が明らかになって大団円というのは、いかにもご都合主義的だ。もっとも舞台で鑑賞すれば、もう少し面白いとは思うのだが。2019/01/31
のっち♬
131
吝嗇なアルパゴンの一家の結婚を巡る喜劇。古今東西守銭奴ほど定番化したコメディネタもそうそうない。資本主義への移行を受けて、作者は絢爛なアイデアの元に強烈な精彩を彼に付加させている。悪辣な高利貸し、使用人の衣装、持参金、食費など凄まじい徹底ぶりに加えて、病的な強迫観念で会話もひたすらズレっぱなし。レトロな笑い好きには合うかもしれないが、第五幕へ行く頃には押し問答で疲弊しかねる。お人好しだけれど本音は威張りたいジャック親方の造形が巧い。子供たちの辛辣な台詞も拝金主義がもたらす家族・人間関係崩壊を警告している。2022/06/17
NAO
80
吝嗇なアルパゴンは、守銭奴、家族よりも、年甲斐もなく惚れ込んだ恋人よりも、金が大事。そんなアルパゴンと息子や娘、その他彼をめぐる人々とのドタバタ喜劇。愛と金、二兎追う者は一兎も得ずのことわざそのもののアルパゴンの葛藤、そんな父の葛藤を皮肉り意趣返しをする息子クレアントの巧妙さが、なんとも可笑しい。2020/02/08
香菜子(かなこ・Kanako)
42
守銭奴。モリエール先生の著書。守銭奴は古い戯曲だけれど、時代を超えて読む価値があるのが守銭奴がいまだに名作として高く評価されているゆえん。こんな守銭奴が身近にいたら気が狂ってしまいそう。でも気が狂ってしまいそうと思わされるほどの守銭奴の存在を文章で表現できるのがモリエール先生の凄さ。2019/08/12
Bashlier
35
2/5 モリエール四大性格喜劇を順読中。興行成績も伸び悩んだとされる本作ですが、主人公のキャラクターが浅薄に感じます。★5評価した「人間ぎらい」の主人公アルセストには人の醜い部分を嫌いながらも、どうしてもセリメーヌを愛することを止められない迷いがありました。そこが溜まらなく魅力的だったのです。一方で、本作のアルパゴンは単純でお金の事しか考えておらず、シンプルな風刺劇に留まっています。もし、周囲の人に対する愛情とお金の間での葛藤があり、揺れる心が描かれれば深い感動を伝えるものになったのではないでしょうか。2023/08/16