出版社内容情報
興の赴くまま人間について語り続けるモンテーニュ(一五三三‐九二)の筆致には,一種いい難いあじわいがあって,われわれの心を引きつける.プルタークに傾倒し『倫理論集』を愛読した彼.自領の館に引退し,古人のひそみに倣って悠々自適の生活を送った彼.読み進むにつれて,そういう彼の人柄が読者の眼前に彷彿するにちがいない.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
湿原
14
岩波文庫で再読。第一巻からではなく、あえてミシェルの思想が色濃い、第三巻から読み始めてみる。二度目の読書であったが、やはり読みやすいとはいえない。自然に話が移りゆく様は、まるで著者と会話しているようだが、自己の内部を明け透けに記し伝えているので、主張の真剣さと重みがダイレクトに読み手側に伝わってくる。ミシェルは解釈は読み手次第と書いているが、それに応えるには少々の忍耐が必要であろう。『論語』と並行して読んだのだが、意外にも内容が近かったのに驚く。「公正であることのもっとも立派なしるしは、自他の誤りを素直に2023/12/21
roughfractus02
13
神の完全さから人間の不完全さを論証する信仰重視の社会も、そこから脱して人間の知の完全性を求めるルネサンス以後の思潮も、共に完全さを追求する傾向に変わりはない。著者は不完全さを排除せず、むしろ肯定する生き方の楽しさ、快活さ、笑いを自身の経験に照らして引き出そうとする。ヒポクラテスの四体液論を思わせる循環するhumor(体液/ユーモア)に満ちた本巻では、自らの謬見や失敗や過誤を含んだ経験が書き記される。間違いが試行錯誤して進む不完全な知の養分となるのなら、残酷と恐怖すらもこの寛容さへ駆り立てる要素となりうる。2022/05/08
ソングライン
9
エセーは、巻が進むにつれ哲学書とは違い、モンテーニュが経験してきた人生論、人生の指南書なのだと思えてきます。それはキリスト教的な宗教感に囚われず、理性的で時に俗物的でもあります。本巻のウェルギリウスの詩句についての章では、恋愛、結婚観が語られます。恋愛は肉欲、欲望から始まり、これにより結ばれた結婚ほど紛争を起こす。結婚には本人の魅力や欲望よりも、親戚、財力が重んじられるなど彼の私見が述べられます。2018/02/20
うた
7
モンテーニュは休日にゆったりと読み返すのに向いている。文章の息が長く、行きつ戻りつしながら話が進むので、あくせくしながら読むと前に詰まってつまづくか、つまらなくなって投げ出しそうになる。エセーのなかでも長いウェルギリウスの詩句についてや経験についてなどは最たるもので、隠居した彼の歩調にあわせて読むと、本書の妙味に気がつくことができるだろう。2021/06/26
Fumoh
6
岩波エセー5巻からは、本来の第3巻が始まります。ずいぶん長いこと書いていると思いますが、わたしもだいぶ読んでいます。するとモンテーニュの書いている時の気持ちが少しずつ分かってくるように思います。彼が落ち着いていて、心も穏やかで泰然としている時は、もっとも聡明で透き通った叙述が生まれてきますし、公平かつ素朴で、自由さが出ている。しかし熱くなったりとか、心穏やかでない時は、頑固だなーと思う意見が出てきたり、自分が批判した人たちの考えを自分も使ってしまっていたり、色々な分野を闊歩して、喋りすぎてしまうので、2025/02/01