出版社内容情報
パンタグリュエル一行は大航海の旅へと出発する.世にも奇怪な,幻想に満ちた島々をめぐって出くわす人々や事件のなかに人間性圧迫者たちへの諷刺や批判がますます多彩に語られる.宗教改革をめぐる争いが激化し,不寛容と思想弾圧の荒れ狂う社会を背景に書かれたこの第四之書にはさらに進んだ深い味わいと意味がある.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
52
パニュルジュの結婚の是非を決められず、パンタグリュエル一行は徳利明神の神託を受けるため大航海の旅に出る。彼らが立ち寄った島々で出会ったのは、フランスの裁判関係者、教会関係者を揶揄って寓意的に表した人々。思想検索や弾圧の厳しい時代に、自分の立場を何らかの形で表し残そうと思ったら、このような韜晦的な態度を取るしかなかったという、この時代の闇の深さを感じる。そんな中でも、教皇愚弄族の島で教皇を愚弄するようなしぐさをしてしまったため悪魔に支配されることになった人々が巧みに悪魔を騙す話など、民話的な要素も見られた。2016/12/13
てれまこし
13
パニュルジュの結婚問題に関するお告げを聞くために航海に乗り出したパンタグリュエル一行は、様々な島で様々な人々に出会う。大航海時代の冒険譚の形式を借りて現実世界の諷刺を行なってる形になる。第三之書と同じくラブレーの歴史的、政治的思想が前面に出てきている。だが第二之書の宇宙観は健在であり、相変わらず下品。この話も強烈なうんこの話で締めくくられる。だが、際限のない糞やふぐりに食傷気味でも、バフチーンのラブレー論の後では、まったく新鮮に読める。まだバフチーンを知らなかった訳者の真面目な困惑ぶりまでおかしく読める。2022/10/10
フリウリ
11
前巻でのパニュルジュの結婚に関して「徳利大明神」の託宣を得ようと、航海に出たパンタグリュエルら。航海はなお続いていますが、大砲に驚いたパニュルジュがウンコをもらしてこの巻終わり、ってなんのこっちゃ。古書店で入手した本巻の岩波文庫の帯には、「ラブレーは不寛容と思想弾圧の荒れ狂う中で韜晦の影に深い意味をひそめる」とあり、まあそのとおりなのでしょうが、ラブレーは上から入れる(食べる)のと下から出す(排泄する)のがとにかくお好きなので、この点、よりご注力いただきたかったと、後世の無責任者は遺憾に思います。72023/11/20
roughfractus02
8
N・フライが物語と区別して「小説」をなんでもありのジャンルに分類したのは、「小説」が読む者の習慣を揺さぶるからだろう。既成の物語パターンを崩す「小説」を読む者に試されるのは、異質なものがぶつかり合って奏でる不協和音に満ちた時空に止まり続ける寛容の態度である。キリスト教圏から出て海に乗り出すパンタグリュエル一行はインドへ向かい、「徳利明神」の託宣を得るまで奇妙奇天烈な諸習慣に出会う。カトリック的習慣への批判を含むこれら記述は、読者に寛容さを求める。18世紀になり、この旅に触発されて、ガリヴァーの旅が始まる。2019/10/01
Fumoh
5
パンタグリュエルたちの船旅について描かれるのが第四の書の今作ですが、いつも通りドタバタ喜劇の、風刺物語が炸裂します。ただしどれもこれも意味不明で、解説を読むと様々なジョークのディテールが分かってくるという次第。この書のメインは訳注解説なのかもしれませんねえ。非常に俗っぽく見える書なのですが、ラブレーのモラリスト的な知見は鋭く、人間のくだらなさと、くだらないからこその尊さを我々は非常になんとなく、知っていくことになります。あくまで、なんとなくです。それでいいじゃんって話。2025/03/01