内容説明
ナチの強制収容所から七人の囚人が脱走。全員を磔にすべく、捜索が開始された。年齢も経歴もさまざまな囚人たちは生き延びられるのか?ヒトラーの政権掌握後、作者(1900‐83)はドイツから亡命し本書を執筆・発表。市民社会にナチが入り込む時代を、誰にもかかわる物語として描いた。ドイツ抵抗文学の代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
75
登場人物紹介は下巻も含めたネタバレになっています。しかし、登場人物が多く、視点も錯綜するため、それがついているのは大変、助かりました^^;ヒトラー政権下での庶民の生活にもナチスへの移り変わる複雑な感情が緻密に描写されています。保身よりも密告によって突然、拘束、尋問され、監視されるという状況があった事が一番、恐ろしい。個人的に主人公とされるゲオルグが根拠のない期待と人を巻き込む事の重大さを見通せない警戒心の甘さがあって好きになれず。寧ろ、ナチスの若造に居丈高に扱われ、殴ろうかと思ったエリの父とフランツが好き2018/07/22
だんたろう
34
1942年に刊行された後、翻訳本は筑摩書房、河出書房を経て絶版になっていた。その後2018年に岩波文庫より再版されたナチス抵抗文学作品。重く苦しい世の中を生きる人びとの描写が延々と続く。登場人物が多く時系列重視で描かれている上に、改段も改行もなく場面が切り替わる。それ故にスピード感を感じて、ぐいぐい引き込まれる。自分以外全て敵といわれた時代に、果たして主人公の本当の見方は存在するのか。煙に巻かれた状態のままに下巻に突入することにしよう。2019/03/31
sayan
30
ドイツ抵抗文学だが個人的に思っていたイメージと本書は違った。誤解を恐れず書くと面白い。スピード感があり脱走者と彼らに関係する人々の生々しい言動に一気に物語に引き込まれた。著者はナチスの迫害から逃れる途中に本書を執筆したという。ナチス政権下で一見平穏だが偽りの社会に違和感を持つ彼らの生殺与奪は、権力に握られている。人々の違和感は、倒錯したセキュリティ思想(権力)によって処罰の対象としてえぐりだされる。その場面は著者の実体験からか権力がいとも簡単に人の心底に入り込む様子を圧倒的な緊張感とリアリティで描写する。2019/01/04
Nobuko Hashimoto
20
輪読ゼミで学生が挑戦するというのでおつきあい。ゼーガースが浮かび上がってきたのは、少し前にみんなで読んだクリスタ・ヴォルフ『残るものは何か』の解説で、ヴォルフが尊敬し、影響を受けた作家として紹介されていたことから。『トランジット』が面白かったので、いけるだろうと思ったら、進まない! 面白くないわけではないのに! 必死で授業までに読み切りました(;^ω^) 当日、学生がとても熱く語ってくれたので、やっぱり読んでいって良かったと思いました。下巻につづく。2019/12/12
ポテンヒット
9
ナチの強制収容所から脱走した7人と、彼らを追うナチスの追跡劇。上下巻で約一週間のお話。主人公ゲオルクとナチスとの距離が近づくにつれてヒヤヒヤする。また、その地域に住む人達の生活から当時の閉塞感が伝わってくる。親しい友人や家族から密告されるかもしれない緊張と恐怖。作者はユダヤ人で共産党員。ナチスが政権を樹立するとフランスに亡命するが、ナチスが侵攻してくるとメキシコに亡命し、そこで終戦を迎える。彼女がもし捕まっていれば、この本を読むこともなかったかもしれないと思うと、感慨深い…。2021/12/01
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