内容説明
ドイツの自然科学者・劇作家ビューヒナーは、23歳と4カ月の短い生涯を彗星のごとく全力で駆け抜けた。残された作品はわずかだが、いずれもずば抜けた先駆性を持っている。その一切の規定を拒む“規格外”の作品は、不死鳥のように永遠の若さを保ち、新たな輝きを放ち続けるだろう。戯曲2篇、短篇小説1篇。
著者等紹介
ビューヒナー[ビューヒナー][B¨uchner,Georg]
1813年10月17日、カール・ゲオルク・ビューヒナー、医師エルンスト・カール・ビューヒナーの長男として、ヘッセン大公領の首都ダルムシュタット近郊のゴッデラウに生まれる。1825年(12歳)ルートヴィヒ・ゲオルク・ギムナジウムに入学。1831年(18歳)ギムナジウムを卒業、大学入学資格を得る。11月、フランス領のストラスブール大学医学部に入学。1834年(21歳)1月、ギーセン大学に戻る。3月から4月にかけて、ギーセンに人権協会を設立する。1835年(22歳)2月28日、ダルムシュタットの拘置所に出頭命令を受け、3月1日にダルムシュタットを脱出、1837年1月、チフスに罹患。2月19日に死亡(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
11
才能はあるが訓練が足りない作家の作品といったイメージ。仏文から見た独文の勝手なイメージなんですが、ドイツ文学は一匹狼が多い気がする。このビューヒナーとかも何も知らないけど解説を見る限りでは誰かの影響を受けたとかがなさそう。仏文はバルザックに触発されたゾラといったふうに大作家同士の関わりが深い。でさらに個人的な意見だけど、ドイツ文学って変な作品を傑作だと認めやすい傾向にある。たぶんこんな作品がフランスにあっても他にいい作品があるから誰も注目しない。この作品は決して大作ではない、せいぜい奇作。と言ってみる。2010/12/25
ひでお
8
以前にベルクの「ヴォツェック」を観たときは、その音楽の難解さもあり、あまり強い印象を残さなかったのですが、原作と、その解説を合わせ読むと、当時の社会情勢や風俗とともにヴォイツェクの悲劇が強く心に残りました。また、レンツのあまりにリアルな狂気の様も生々しいし、ダントンの死は、フランス革命直後の革命家の激しい対立が鮮やかに描かれる傑作でした。やはり、歴史と思想をセットで勉強してから取り組むほうがいい作品かもしれません。2024/02/22
fseigojp
7
ビューヒナーの意図は革命劇のかたちで宿命論をのべている?2024/10/17
twinsun
5
レンツ:物狂いの作家の晩年。崩れ落ちるのは世界ではなく自分の足元のみである悲惨。 ヴォイツェク:突っ走る激情の描写。固定された眼を共有する体験。 ダントンの死:投げやりな理想と現実の需要。湖と思い飛び込み泥沼と知り受容するけだものであれば冒さないであろう死にざま。 2022/04/29
feodor
5
19世紀前半の作品なのだけれども、びっくりするほどに現代的。 「レンツ」は実在する疾風怒濤期の劇作家レンツの狂気を描く小説。なんというか、狂気のさまが静謐に描かれていて怖い。「ヴォイツェク」はベルクのオペラ「ヴォツェック」の原作となったものなのだけれども、これもまた静けさと動きとの同居っぷりが感じられる。「ダントンの死」はフランス革命を描いているのだけれども、タイトルが結末につながっていくわけで、ぐんぐんとその結末に向かっていくダイナミズムと、ダントンのもつダンディズムみたいなものとが印象的だった。2012/08/27