岩波文庫
ラデツキー行進曲〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 387p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003246245
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

内容説明

不穏な予兆ただようロシア国境、サラエボでの皇太子暗殺事件と第一次世界大戦の勃発―「新しい宗教」民族主義に押しつぶされていった祖国ハプスブルク帝国と汎ヨーロッパ理念に捧げた、放浪のユダヤ人作家ロートの哀愁に満ちた鎮魂歌。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nobi

84
遠雷であったはずが気づけば泥雨の中、それが第1次大戦前後を生きた人々の感じ方ではなかったか。男爵家が皇帝に仕えることの意味は薄れ、ウィーンへ向かう一等車室でのフォン・タウスィヒ夫人との逢瀬は栄光の残滓を留める帝国の儚い夢に過ぎなかった。今や軍人は荒涼とした砂地を行軍する。男爵家三代目トロッタ少尉は華々しい悲劇の主人公とはならなかった。情けなくあっけない。けれど切々とした描写が続く。中でも二代目トロッタ郡長が息子のために“狂気じみた確信”を持って立ち動く滑稽感漂う姿の中に、時代を超えた人間の勁さを見た思い。2018/04/15

星落秋風五丈原

42
【ガーディアン必読1000冊】フランツ・ヨーゼフ皇帝は本人よりも悲劇的な皇后エリザベートの方がともすると有名だ。旅から旅へ忙しく動いた彼女は現実逃避を目指していたかに思われるが、皇帝もまた現実が見えていなかった。現実が見えていたら、飛ぶ鳥落とすプロイセンと戦などしてはならなかったのだ。見た目のよい軍服や演習を好んだものの、実戦では見事に負け続けた彼は、いわゆる文明の利器からも目を背け、近代国家へと変貌を遂げる他の欧州から取り残されてゆく。そして、その事に全く無自覚である。2021/01/04

ヘラジカ

31
予期せずして祭り上げられたが故に、始まりと共に下落していく人生の悲哀。この作品では、人生自体というよりはその哀情が重点的・入念に描かれている。大きな感動はないが、滲むような切なさが心を浸していく傑作である。随所で脳内に鳴り響くラデツキー行進曲は、本来の勇壮さ失った物悲しい旋律だった。2015/04/11

Nobuko Hashimoto

25
物語部分も面白いが、時代の雰囲気がわかるエピソードが参考になった。軍の将校と人妻との恋愛、娼館に繰り出す軍人たち、侮辱を受けたら決闘する習慣、将校と従卒との関係、ガリツィア地方の様子、帝位後継者暗殺事件に際するハンガリー人たちの態度などなど。ナチ党が台頭してきた1932年のベルリンで書かれたということを考えると、単なる郷愁ものとして紹介されるのは違うかな。ロートの他の作品もまた読もう。https://chekosan.exblog.jp/30602754/2021/07/10

壱萬参仟縁

25
WWⅠ勃発(表紙見返し)。ホイニツキ曰く、わたしは金持ちです。人から金持ちと呼ばれています。わたしは金には皆目執着がないのです(69頁)などと言ってみたいもんだねぇ。ま、一生無理だけど。農夫たちは小屋の前に立って、大鎌を丸い赤煉瓦色の砥石で研いでいた。土地のいたるところで、鋼が砥石に擦りつけられてぶーんという音を立て、こおろぎの歌声を掻き消していた(311頁)。暮らしぶりに、自然風景描写がイメージを膨らませる部分がある。2014/12/25

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