出版社内容情報
ヴッツ先生は貧しくて本が買えない.そこで有名な本の題名だけを拝借しては勝手に著述し,それをわが蔵書の棚に並べて満足感にひたりこむ.ささやかな喜びを糧に人生をおくる平凡な小学校教師の姿を,ジャン・パウル(一七六三‐一八二五)はユーモアとアイロニーたっぷりに描きだす.ドイツ散文芸術の大先達とたたえられる作者の傑作二篇.
内容説明
ヴッツ先生は貧しくて本が買えない。そこで有名な本の題名だけを拝借しては勝手に著述し、それをわが蔵書の棚に並べて満足感にひたりこむ。ささやかな喜びを糧に人生をおくる平凡な小学校教師の姿を、ジャン・パウル(1763‐1825)はユーモアとアイロニーたっぷりに描きだす。ドイツ散文芸術の大先達とたたえられる作者の傑作2篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
51
表題作と『シュメルツレの大用心』を収録。ジャン・パウルの語り手たちの何と饒舌なこと。ヴッツ先生の穏やかで幸福で偉大な人生を、また自分の勇気を彼らは語る。それは巧みで、軽やかに飛び跳ねるようで、時にその勢いについていくのが大変なほど。ただその、ヴッツ先生の貧乏でつましい人生や、文字どおり転ばぬ先の杖を持ち歩くほど臆病な自分の勇気を讃える、愛すべき、皮肉で諧謔に満ちた笑いを誘う語りを楽しみながら追っているうちに、「われわれみんなに共通の定めである空しさ」や孤独が姿を現すようで、ほろ苦いものも味わいました。2020/04/30
きゅー
12
2篇が収録。「陽気なヴッツ先生」は貧乏で本が買えない教師の物語。本が買えないので、その代わりに出版された本を想像のままに書き上げあげてしまう、というコペルニクス的転回にめまいがする。もう1篇は、自分のことを勇敢で男らしいと勘違いしている臆病者の物語。これがおもしろかった。主人公のことをいくらでも卑怯者に書くことができるのに、そのようにはしない手際にジャン・パウルの良識を見ることができた。ものすごくデフォルメされているけど、どんな時代だって人間の性格の弱い部分は変わりはしない。笑えて、ほろ苦い作品だった。2015/12/02
こたろー
9
とてもおもしろかった。特に表題作『陽気なヴッツ先生』のフモールと機智は抜群でここ最近読んだものの中ではずばぬけて好き。耽美的なロマン派文学とはまた違ったロマン派文学?読みながらホフマンを連想したりしたけどそれともちょっと違う。何かの教義もなければ深刻さとも無縁で、自由奔放で快活。詩のように軽やかな散文。文学と笑いについて色々と考えさせられた。他の作品も読んでみたいなぁと思うけど、気軽に手に入れられるものがなさそうなのは残念。2013/01/30
刳森伸一
4
2篇所収。「陽気なヴッツ先生」は貧しくて本が買えず、題名から想像して同題名の自分なりの本を書く教師の物語。哀しみと優しさに満ちたで作品。「シュメルツレの大用心」はドンキホーテ的な人物の活躍(?)を描くユーモア譚。病的な人間でありながら、どこか僕らに似ていて憎めない。両作とも読書の楽しみをしみじみ感じる佳作だと思う。2017/06/18
T. Tokunaga
2
私はあまりこの本のよい読者ではない。また、そうなりたくもない。悪ふざけというよりグロテスクなユーモアには幾分スキゾイドな匂いがして、つい読み飛ばしてしまう。特に「大用心」のほうが、時制が正確なぶん怖い。2022/04/22
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