内容説明
ウィーン生まれの詩人・劇作家ホフマンスタール(1874‐1929)は、早熟の神童として10代から20代にかけて詩を作ったが、若くして詩を放棄して本格的に劇作に向かった。西欧の詩的伝統を踏まえたその詩は、温柔であり幽艶であり典雅である。ホフマンスタールの“幻視的世界認識”は、常に大いなる連関へと向けられていた。
目次
詩篇(早春;体験;夜のひきあげ;旅の歌;二人;人生の歌;きみの顔には;世界の秘密;外側の生のバラッド;三韻詩 ほか)
詩論・エッセイ
詩人論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
魚京童!
22
ホフマンいいね。好きだわ。わからんけど。こういう感じを言葉にしたいってずっと言ってるけど、言ってるだけなんだよね。その辺どうにかする手段についての読書をすすめる必要があるね。2017/05/14
ぞしま
13
手に負えない拡大する(或いは膨張する)自意識に現前する世界のまばゆさが濃密に切り取られている……そのように思えた。そこでは死すらも甘美に見え、あらゆる言葉は色濃く匂い立つかのよう。のちに詩を手放したホフマンスタールの若書き。どこまで行っても自分であるということが我慢ならなくなったとき、違う表現を彼は選んだのではないか。そんな妄想に襲われる。「体験」と「人生」がとりわけ好み。好きな人にはたまらない詩集だと思う。2017/07/05
井蛙
3
驚かされるのは、この詩人が自身の天才性をよく自覚していながら、一方で虚心に外界へ向かって身を委ねているように思われることだ。彼は自身が世界の中にあること、他者の間にあることをごく自然に受け入れてる。そこには憧憬や葛藤というものがない(あるいはそれは後から出てくるのだ)。「明るい照り返しが 輪を描きながらさまよっている だれもが自分はひとりだと思っているが だれもが 他人のうちに自分を感じている」こんな悟りきったことを、二十歳かそこらで書くというのがちょっと信じられない。あるいは普通のことかもしれないけど。2018/09/21
一郎二郎
2
人間にふさわしい、つつましい世界が一方。他方に覇者が手にする様な、この世と禁断の果汁、女神を駆り立て、精霊を侍らす世界と言葉が作る夢の世界が詩われる。しかし、そのような世界が実は閉塞しており、他者の思念に支配され、罪を忘れたものであり、虚無であると詩われる。私の霊魂が人生で望んでいる事を、私が言い当てられない事に絶望し、私を取り囲む何者か未知のもの、戦慄させるものに想いを寄せる。未知の者に未知の言語で申し開きをする事になるという予感で終わる。「不幸な者よ なぜお前は尋ねなかったのか?」/どうやって尋ねる⁇2021/12/26
Mark.jr
2
ホフマンスタールはオーストリアの詩人・劇作家ですが、詩を書いていたのは20代の間だけだそうです。そのためなのかもしれませんが、ここに収められた詩に流れる感情は若々しく、かなり汲み取り安いものです。とはいえ、やはり詩なので読んでみないと分からないと思うので、印象的なフレーズを抜粋します。 「次から次へと星がのぼり、きみとぼくとの頬を照らす、星たちもみな心得ている、そのかがやきはいよいよまさり、ぼくらは楽欲の吐息をもらし、さながら至福の囚われびと 身を横たえて、たがいの息吹を感じている」2018/08/30