出版社内容情報
ある朝目ざめると青年ザムザは自分が一匹の毒虫に変っていることに気づいた.以下,変身したザムザの生活過程がきわめて即物的に描かれる.カフカ(一八八三―一九二四)はこの物語で,自己疎外に苦しむ現代の人間の孤独な姿を形象化したといえよう.二十世紀の実存主義文学の先がけとなった作品である.『断食芸人』を併収.
内容説明
ある朝目ざめると青年ザムザは自分が1匹のばかでかい毒虫に変っていることに気づいた。以下、虫けらに変身したザムザの生活過程がきわめて即物的に描かれる。カフカ(1883‐1924)は異様な設定をもつこの物語で、自己疎外に苦しむ現代の人間の孤独な姿を形象化したといえよう。20世紀の実存主義文学の先がけとなった作品である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
esop
73
超有名な変身を読みたくて。 面白かったなぁ、 青年ザムザがある朝起きるとばかでかい毒虫になっていた、という話。 家族の大黒柱だったザムザが、ある日を境に、役に立たなくなる、家族の態度もどんどん変化していき、不条理・価値観みたいなものを、浮き彫りにさせていく。 ありえないことなんだけど、家族の反応が非常にリアルというか、主人公のやるせなさが胸に刺さる(考えさせられる) 断食芸人もテーマは深い。豹との対比が秀逸。 再読したい。2025/11/28
優希
52
ある朝毒虫になっていたグレゴール。突然襲った悪夢のような日々は家族の非道さをも即物的に描いていると思いました。グレゴールの最期が家族が幸せを取り戻すことになるのが悲しいですね。また『断食芸人』のストイックなまでの断食は「死」に向かうことのみしかできない絶望を感じました。淡々と描かれた2編は色彩こそ違えど絶望を見ずにはいられません。現代の寓話とも言えるでしょう。2025/01/10
森の三時
48
あまりにも有名ですが、ある朝起きたら突如として虫に変身していてその日から家族に厄介者扱いされ…、というもの。作中なぜ虫に変身してしまったのか定かではないため読者は隠喩や寓話として様々な解釈や考察をしないではいられず不条理だからこそかえって奥深い。彼はこれまで一家の家計を支える大黒柱として、会社の営業職として身を粉にして跳び回っていたはずではないか。読みながらこれは誰にでも起こりうることのように思われた。激務によりメンタルを壊したり過労や事故で健康を損ねたり、人生で思いがけず起こる不幸な出来事が想像された。2023/08/18
フム
43
再読。2014年に読了の登録があるものには感想がなかったが、なぜだろう。感想の記述がない理由は『1984年』もそうであったが、その容赦ない小説の結末に言葉を失ってしまったからだと思う。朝目覚めた青年ザムザは毒虫と化した自分に気づく、という度肝をぬくような冒頭から、家族の戸惑いやこの事に翻弄される姿にはユーモアのようなものすら感じさせるのだが、読み進めるうちにその笑いはだんだん冷たく凍りついていく。再読のきっかけは、頭木さんの本だが、これは孤独で弱ったときに読んではいけない類いの本なのではないかと思った。2021/03/22
西野友章
42
明らかにカフカは、断食という精神の行為を否定的に描いている。あるいは逆説的に描いていると思った。そうするしか仕方のない、あるいは生き方がわからない人に対して、世間の理解が低すぎると訴えているのかもしれないと思った。また、世間の関心は、断食という精神世界よりも、豹のような、なんでも食べる精悍でわかりやすい肉体にすぐに飛びついてしまう、無分別への警告なのかもしれない。あるいは、断食芸人は、断食芸としての生き方に確固たる信念のもと死を迎えたことは、書くことでしか評価されないカフカの分身かもしれない。。2019/03/09
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- 和書
- PK 講談社文庫




