出版社内容情報
薄れゆく亡夫の思い出,次第に失われていく若さの悲しみ.いまひとたびの生の喜びのために点じられた愛の炎も,世の冷たさに触れふたたび静かな諦めの世界へとひきもどされていく.若く美しい未亡人の愛欲の最後のあがきを描いた,オーストリアの「ボヴァリー夫人」ともいうべき作品.
感想・レビュー
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きりぱい
13
寡婦となってふさいでいたベルタが洞察する周囲の人々と、もてあます自分の内面。昔の恋人との再会に心を弾ませるけれど、相手の思惑などお構いなしに二人の関係を夢想し、愛を確実なものだと思うベルタ。思い上がりの内面を見苦しいと思うのは、他人事として見るからだろうなあ。「オーストリアのボヴァリー夫人」とも言われているそうで、ふうん、そうなんだ・・え?男の心だけでなく、周囲の人間すべてが見えていなかったのは幸せなのか不幸せなのか、ルピウス夫人はちょっとよかったのだけど、最後は思いがけなくて。2012/07/24