出版社内容情報
シュトルムの最後の作.彼が幼時聞かされた故郷の口碑伝説に基づき,「堤防を築いて海面より低い耕地を守り,日夜海水と戦うフリイスランド人の生活」と「無理解な民衆に取りまかれながら,百年の後もなお崩れない大堤防を築き上げた孤高な主人公」とを精彩ある筆致で描いた作品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
62
表題作は北部ドイツの村が舞台で、堤防が決壊する時に現れる「白馬の騎手」の伝説を説明する形で、数代前の堤防監督官ハウケ・ハイエンの人生が語られます。その物語は、彼の成功や謹厳な仕事ぶりを厭う人々との軋轢や水という自然を相手の闘い、その孤独などに彩られていて、しかしそんなままならぬものを相手にできる限り誠実に「自分の役目」を全うしようとする主人公の生き方に、作者の人間や人生についての理想と祈りが結晶しているよう。全体に暗いトーンなのですが、その中に宝玉がほのかに煌めくような美しさがありとても魅了されました。2022/09/19
彩菜
36
舞台は北ドイツの低地地帯、波と闘うこの地に百年壊れない堤防を築いたハウケの伝説が語られます。悪魔や幽霊、迷信と悪意混じりのその伝説を著者は「優秀な人間を人並み外れた所がある位」で貶めると言う理性的な語り手に委ねます。…迷信と理性、波と地、信念と反発、知恵と無知、語りから物語の中の幾つもの対立へ、幾つもの緊張へ、それは高まりながら展開しハウケの複雑な姿(信義と憎悪、愛と名誉欲)や北の厳しい生活に説得力と命を与え、しかし最後には大波となって全てを浚っていってしまいます。終わってみれば一瞬の波の形を見ていたよう2023/10/23
あかつや
6
幼い頃から堤防に並々ならぬ興味を抱いていたハウケは堤防監督官の地位に就き、百年経っても崩れない堤防の建築に着手する。大昔から治水に力を入れて、ついに大堤防を築き上げたフリース人の伝承に基づく物語だそうで。新しいものに無理解な民衆の冷たい視線も物ともせず、全てを投げうって仕事に励むハウケさんは立派だな。でも人柱や動物の生贄みたいな古い慣習を徹底的に否定した彼が、結果的には人柱みたいな存在になったのは皮肉だな。自分が迷信側に立つなら、ほら彼らが犠牲になったからこんなに頑丈な堤防になったんだって言っちゃうね。2022/06/28
きりぱい
6
シュトルム最後の作品。ロマンチックさや郷愁の感じられる「みずうみ」など他の作品からすると、ちょっと感触の異なる作品。堤防造りに打ち込んでも、やっかみと迷信にとらわれた村人たちから反発を受ける孤高のハウケ・ハイエン。なんていたましい運命。常に暗雲が晴れないような切ない物語だった。暗い・・。2012/02/13
海
1
こんなに薄い本なのに、時間がかかってしまいました。旧仮名と漢字使いが読みにくかったです。主人公に共感できなかったことも、大きいかもしれません。題名から、もっとロマンチックな話かと想像していたのですが、堤防監督官の奮闘記だとは思いませんでした。主人公のハウケは逆玉婚になるのでしょうか?彼の頑張りは素晴らしいのに町民の反発を買うのは、妬みももちろんですが、やはり性急すぎるからだと思います。2013/02/25