出版社内容情報
ドレスデンの革命的反乱の関係者として逮捕状を発せられたワーグナーはチューリッヒに亡命した.しかし生来情熱的な彼は依然として社会革命の近きを信じ,自己の芸術理想の実現を革命に求めてやまなかった.本書は,革命という抽象概念に詩的映像を与え,それが個々の人間および社会群に与える影響を生きいきと描写している.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
5
階級差別解消のための、一般的民衆軍の設立。「われわれは目標を確実に注視しているので、まず貴族主義の最後の閃光の壊滅をさえ欲する…われわれの「共和主義の」運動において欲するものは、常備軍と常置の民兵団ではなくて、一般的民衆大軍である。…それは徐々に実施されて、常備軍と民兵団を、目的にふさわしく編成してあらゆる階級的差別を絶滅する一大民衆軍に解消させるものである。このように、従来は嫉妬敵対の分裂をつづけていたすべての階級が、なつかしいドイツの土地において、神から人間らしい呼吸をうけた一切のものが帰属する」2024/09/04
moi
2
訳者があとがきでも書いているように、ワーグナーの革命思想は自己の理想的芸術の実現への手段にすぎない。雄弁に理想を語るも矛盾だらけで、なかなか著者に共感しづらく、読む手が進まなかった。ニーチェが『悲劇の誕生』で書いていることは、ワーグナーからの受け売りが多いのだなあと気づきもあったが、そんなワーグナーに心酔していたニーチェを後年失望させることになると思うと、ニーチェが可哀そうでならない。2022/02/03
ぴよぴよーーーーー
2
序盤からワーグナアの激しい口調で論破しにかかってくるような文体と、旧字体で溢れかえる紙面に圧倒された。(正直途中でギブアップしようかと思った)彼の言う芸術とは、人間がなし得る最高位の自己表現であり、それが近年、低俗な産業界によって金銭の利益を求める単なる手工業になって…。芸術の本来の存在・意味を取り戻すために革命を起こし、今や芸術が産業界の1つの手段と成り果てたと同時に頽廃した劇場を元通りに戻す…ために集え!みたいな。この手の思想書で、構想も練らず書き連ねてられていくのを読めるようになるのが今年の目標です2015/01/11
Yoshi
1
ワーグナーの国や社会、芸術に対する考え方がのぞける。 読んでみると、自由を求める熱意や古典ギリシャへの尊敬の念、真の芸術を起こし革命を起こすなど、典型的な芸術に燃え生きることを称賛する、とても真っ当で熱意ある芸術家であることがよくわかった。 ニーチェとの関係や、その思想ゆえにファシズムに取り込まれていく様もこの本を読んでいるとまったくそうは思えないのが恐ろしい。 この年代は、強さと力を求め、正義に燃えることが、正しくなくなる前の時代だった、という認識がある。2020/03/03
またの名
1
アツイ、暑苦しすぎるよワーグナーさん…なアジテーション本。欧州社会が激動した1848年頃。人間の自由=権利=使命=義務=幸福=解放というこじつけ感たっぷりの修辞で社会革命の必要性を訴える。そして当然ワーグナーにとって真の革命は真の芸術と切り離せない。金銭を用いた経済システムが支配する近代において真の芸術は不可能になっているとする洞察の背後には、典型的な古典ギリシャ崇拝がある。しかしもはや復古ではなく未来志向だ、革命だ!と高揚。そんなワーグナー自身、キッチュな商業芸術と親和性があるという批判もあるのだけど。2013/06/22