出版社内容情報
オランダの僻村の村長で裁判官をかねるアダムは,恋する少女の部屋から逃げ出すさいに家宝の甕を壊してしまう.少女の母はアダムの恋敵である男を嫌疑者として告訴する.事件の取調べにあたるのは言わずと知れたアダム.自分の罪をかくして,なんとか男を犯人にしたてようと躍起になるが…….クライスト(一七七七‐一八一一)の傑作一幕喜劇.
内容説明
オランダの僻村の村長で裁判官をかねるアダムは、恋する少女の部屋から逃げ出すさいに家宝のかめを壊してしまう。出女の母はアダムの恋敵である男を嫌疑者として告訴する。事件の取調べにあたるのは言わずと知れたアダム。自分の罪をかくして、なんとか男を犯人にしたてようと躍起になるが…クライストの傑作喜劇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きりぱい
10
元は「こわれがめ」というタイトルの絵から着想された喜劇だというのが面白い。冒頭からなにやらアクシデントで慌てている村長アーダムの元へ、急な視察で司法顧問官がやってくる。穏やかに去ってほしいのに、かめが壊されたという訴訟がもちこまれ、裁判長を兼ねたアーダムの裁判を見たいと言い出した。犯人はすぐわかるのだけど、なぜスムーズに証言が出てこないのか徐々にわかってくるのが面白い。明らかにひっかかるところがあるのに必死な人物がもうね。2012/08/19
リカステ
6
喜劇。どうしてそんな風に隠し立てするのか、読みながらずっと不思議だったのだけれど、第12場でようやく納得。異曲の方が好き。2015/12/01
ダイキ
4
大学図書館。ドイツロマン派の作家という事で。所々読んでいると頭がおかしくなりそうになる「眼の奴が手ぶらで帰って来たもんだから、『このめくらめ』と叱りつけて、もっとよく見て来いとすぐにまた追っ帰した。すると今度は眼の奴がとんでもねえ報告をもって来たので、わしは、このろくでもねえ告げ口屋の、そそのかし屋の、耳打ち屋めと叱りつけて三度目の斥候に出しました、だがわしや、眼は立派にやるだけの事をやったんだから、腹を立ててわしの顔から追ん出て他処の勤め口へ行って了うんだろうと思いました、つまり、エーフェは居たんでさ」2016/06/27
goMi
2
笑い転げた。喜劇が少ないといわれるドイツだが、本作は異例の傑作だろう。 クライストの諸作品ではしばしば物語の冒頭で物語の結末が予見(Antizipation)されるとされるが、本作もその例外ではない。村長アーダムがみる夢の中で、裁判官として自らを裁く、という物語のプロットが暗に示される。だが、「森の中へ逃げ込む」という部分をもう少し描いてほしい気もした。ゲルマンの民間伝承では森は呪術的な空間と解されており、俗なる世界とは一線を画すものであった。そのため「森の中へ逃げ込む」ということが何を意味するのか2020/01/13
無能なガラス屋
1
人を裁く立場の人間が、逆に裁かれる立場だった。見かけだけを頼りに人を判断してはいけないという教えを読み取るのが普通なのだろうが、それよりも、"かめ”というモノに執着して、過剰に取り乱すおばさんの様な人にはなりたくないという気持ちの方が強かった。2020/01/31