出版社内容情報
ギリシア軍のトロヤ城攻撃のエピソードから取材した作品.女人国アマゾネス族の女王ペンテジレーアと英雄アヒレスとの恋愛の葛藤を主題として,愛と憎,憧憬と絶望との交錯を描いた悲劇.作者(1777‐1811)の特異な個性と深刻な体験とを芸術的に具現してあますところなく,もっともクライスト的な戯曲と称せられる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
24
盲爆とドローン攻撃に慣れてしまった時代の我々は忘れかけているが、戦いとは本来顔と顔を突き合わせるもので、敵との間に惻隠の情の生まれる余地があり、エロスとタナトス、敵意と恋愛、噛みつきと接吻は紙一重で、復讐の女神と美の女神は同一のものの異なる側面なのだろう。戦場の只中と思えない中盤の愛の場面が忘れがたい。仇敵同士、互いに傷を負ったギリシャの英雄とアマゾンの女王が、武器を捨てて向かい合い、彼女は彼の体に薔薇の花を巻きつけ、音楽が鳴る。はかなく危うい均衡はまもなく崩れ、血みどろの破局まで一直線に進むのだが。2025/01/12
壱萬参仟縁
15
解説によると、 1806-07年に書かれたという(273頁)。 24場悲劇。 アマツォーネ族の女王である、 ペンテジレーア曰く、 「人間は苦悩(くるしみ)の真中で、 偉大であり、英雄であるかも知れぬ、 しかし浄らかな幸福(さいはい)に酔ふと、 彼は神々しいものとなるのだ!」(144頁) 英雄か、神か。 私なら英雄になるだろう。 神になどなれやしない。 2014/07/13
ホームズ
6
旧字は読みにくかった。内容はギリシア神話とは変えられていました。これはこれで良いかな(笑)しかし登場人物たちの名前が…。特にアヒレスって(笑)アンティロコスも分かりにくくなってて。初版が1941年って戦争中だったんですね〜2012/05/20
泉を乱す
3
過去読了。「そなたの名はわしの白鳥の歌とならう。」2015/05/23
uchiyama
2
人を狂気か死に追いやることが目的であるかのような、社会通念や道徳や慣習や(そして運命や)のあまりに不当な要求を前に、それでも、勇敢に、「被害者」として生きることだけは断固拒絶するクライストの主人公たちの、痛ましくも美しい(ときに、はからずもコミカルな)必死(文字通り死に至る)の生に、毎回ヤラれます。ほとんど格闘技。おそらくリズミカルなんだろう原文がまったく読めないのが残念だけれど、この、「〜ぢゃ」語尾の古めかしい昭和15年訳でも類推はできるほどの疾走感。2025/04/18