岩波文庫
牡猫ムルの人生観 〈下〉 (改版)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 327p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003241448
  • NDC分類 943
  • Cコード C0197

出版社内容情報

人間の言葉はしゃべれないが,読み書きは自由な牡猫ムルが,自伝を書いた.ところが,執筆中に,ムルが遠慮なく破っては吸取り紙にして原稿の間にはさんでいった楽長クライスラーの伝記までいっしょに印刷されてしまったから大変,猫の自伝と人間の伝記とが交互に入り交じるという何とも珍妙な書物がここにできあがったのだ.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Gotoran

31
人語を解し教養高い牡猫ムルの自伝的観想と楽長クライスラーの伝記が交互に組み合わさった本書(下巻)。ムルとクライスラーの物語には随所に(意図された)類似点が見出される、ムルとクライスラー、ムルの恋猫ミースミースとクライスラーノ恋人ユリア、恋敵として黒灰黄(みけ)猫と公子ヘクトール・・・両物語(特にムルの恋愛とクライスラーのそれ)の相似点から著者が(当時の)人間社会を面白可笑しく皮肉ったことを伺い知ることができた。また、巻末の訳者解説では、漱石の『吾輩は・・』の終盤に”カーテル(独語で牡猫の意)・ムル”と↓2014/02/23

壱萬参仟縁

22
正直な伝記作家の第一の義務は、 正直であること(9頁)。 牝猫とは地上に生をうけたるすべて のものと等しく、はかなく無常なる ものである! (162頁) 称讃や非難、敵視、愚弄、揶揄的な 嘲笑、罵倒、喧騒の上に、 ムチイウスは超然としている(169頁)。 あるものがまさに無頼漢的行為を 犯した瞬間に、特に正直で有徳である と考えられるようなことが、 人生にはしばしばありがちなことである (247頁)。 なんとも難しい人生模様。 というか、猫生か。   2014/08/05

Fumoh

4
上巻と同じ体裁で、下巻も続いていくが、かなり長丁場なストーリーなので、これをどう考えるかで評価は別れるだろう。実際、文体はロマン派風で、装飾華美ではあるから、それを美しいと取るか、くどいと取るか……。またこの話は、ホフマン自身の思想を語るものでもある。それゆえ当時の思想世界を調べる資料としても価値が高いと言えるが、読み物としては、構想が壮大すぎるゆえに、テーマが絞られているとは言えず、一種の大河小説を読むような我慢強さが強いられるのは、マイナスだろうと思う。続きはあったが未完となっている。2024/01/13

千景

3
最終巻が描かれなかったのが残念!ムルがなんだかんだ可愛くて好きです2021/04/08

ミコヤン・グレビッチ

3
人の言葉を解する「牡猫ムル」が自伝を書き、吸い取り紙として挟んだ宮廷楽長クライスラーの伝記の「反故」が、混在したまま印刷されたという設定で、ムルとクライスラーの物語が交互に繰り出される。ただ設定上、特にクライスラーの話は、いつも唐突に語りが始まって読み手を戸惑わせがちで、凝った作りが裏目に出た感も。最終巻は作者病没のため世に出ず、本書の最後でムルは突然死んだことにされ、クライスラーの方もいくつもの伏線が未回収のまま終わっている。小説として面白いんだけど、未完という点と翻訳の古さ(初版1935年)が残念。2020/01/23

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