出版社内容情報
平穏な日常の秩序をふみはずして我知らず夢想の世界へふみこんでゆく主人公たち.幻想作家ホフマンは,現実と非現実をめまぐるしく交錯させながら,人間精神の暗部を映しだす不気味な鏡を読者につきつける.収録作は「クレスペル顧問官」「G町のジェズイット教会」「ファールンの鉱山」「砂男」「廃屋」「隅の窓」.
内容説明
平穏な日常の秩序をふみはずして、我知らず夢想の世界へふみこんでゆく主人公たち。幻想作家ホフマンは、現実と非現実をめまぐるしく交錯させながら、人間精神の暗部を映しだす不気味な鏡を読者につきつける。名篇「砂男」はじめ六篇を収録。
著者等紹介
ホフマン[ホフマン][Hoffmann,E.T.A.]
1776‐1822。ドイツの幻想作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
140
クララ突き落としたい夜にウグイスは最期の声音で森を響かせ地に落ちた。月がすべてを見てわらったように見えたね、オリンピア。遠眼鏡でマヨヒガの扉を叩いた先導するはトールベルン、地底には紫の星々が永遠にまたたき輝く女神は手に手をとって宝石の散りばめられたゴブレットに馨しい美酒を注いでくれるだろう、もはや未練など。さようならガブリエレ、あなたの愛しい赤子は私がいただいていきますね。2020/04/21
ジョンノレン
54
ワルターが耽読と書いていたので手に取る。怪異系のイメージはともかく、ホフマン本人は法官であり且つ作曲をはじめ音楽にも造詣深く、弦楽器の響柱(魂柱)を微妙に傾ける話なども交えてくるほか、人間心理観察の妙、筋立てとも巧みな知的御伽噺に思わず吸い込まれる。淡々と語られる「顧問官クレスペル」と、物語りの途中で作家が自身の言葉で、展開と語り口を模索しつつ、やがて物語りに戻る変わった造りの「砂鬼」は顛末に至る劇的展開もあり結構楽しめた。2024/12/03
スプーン
40
(「砂男」のみレビュー)メタリカの影響で読んでみた短編。悪夢のような世界観。奇妙な登場人物たち。まさしく狂気の砂男!2020/08/19
Aoyama Satsuko
35
特に面白かったのが「砂男」。主人公はコッポラから望遠鏡を買い、それを通しオリンピアを覗き見てしまうことで彼は狂ってしまう。最後の塔に登り、主人公が錯乱し暴れ狂い、ついには墜落死するシーンは自分の中では強烈に印象に残っています。色眼鏡等、ガラス細工には人の世界を変えてしまうモチーフがありますが、この篇でもそうであり、不思議な力があるとしみじみ感じました。2019/03/06
Aminadab
28
「砂男」さえ未読だった自分にびっくり。もひとつびっくりしたのは1810年代の作にしては超絶的にモダン。ポーより20年早いのに「クレスペル顧問官」以下謎解きエンタメ小説の形式が整っているし、「砂男」「廃屋」の精神医学や催眠術への関心も新しい。バレエ「コッペリア」、オペラ「ホフマン物語」などドイツ国外での舞台化が多いのもうなずける。巻末の絶筆「隅の窓」のベルリンの市場のスケッチなんてホームズものの冒頭みたいだし、ナポレオン戦争の大試練を経て少しはヨーロッパの都会っぽくなってきたという述懐にもつい涙腺が緩む。2023/10/04