出版社内容情報
ドイツ・ロマン派の異才ホフマン(一七七六―一八二二)自らが会心の作と称した一篇.緑がかった黄金色の小蛇ゼルペンティーナと,純情な大学生アンゼルムスとの不思議な恋の物語は,読者を夢幻と現実の織りなす妖艶な詩の世界へと誘いこんでゆく.芸術的完成度も高く,作家の思想と表現力のすべてはこの作品に注ぎこまれている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
381
ドイツ・ロマン派を代表するホフマンの初期長編。濃密なロマンティスムというよりは、そこには光あふれる明るい世界が展開する。ただ、魔法も登場し、不思議な空間の中に独特の世界が繰り広げられるものの、幾分か物足りなさは否めない。おそらくは、物語の発端から結末に至るまで、終始人間的な情念の高まりに欠けるからではないだろうか。黄金の小蛇に恋する青年、アンゼルムに共感を寄せ難いことも小説に距離を置く一因だ。むしろ、これはあくまでも美しく幻想的な詩として味わうべき物であるのかもしれない。2014/09/05
syaori
61
ホフマンは平凡な日常を、何と見事に「この世ならぬものの微光」で包むことでしょう。可憐な蛇に見つめられ呼びかけられて、あっと言う間に現実と幻想が交差する異様で魅惑的な魔法の世界が開けます。この魔法はヘールブラントが「詩的なアレゴリー」と言うように、詩的なイマジネーションと結びついているもの。そしてこの神秘と歓喜に満ちた物語は、たとえ身は辛い現実にあってもポエジーを信じていればいつだって、この本が見せる金色の至福を味わえるのだと言っているようで、私にいま一度、創造の力を、それを味わう楽しさを教えてくれました。2019/05/02
藤月はな(灯れ松明の火)
24
導入が妖しげなのに美しくも妖しい恋愛からどんどんと常識、世俗の欲と執着のの恋情、底知れぬ存在の悪意も絡み、全ての伏線が解明され、なだれ込むという怒涛の展開がすごかったです。最後で主人公が手に入れた場所のすばらしさと自分の知る世俗のあまりのみみっちさの落差に嘆く作者にリントホルストがいった言葉が印象的でした。2011/11/20
あっきー
21
⭐2 桑原世界近代小説五十選25冊目、ドレスデンが舞台でノヴァーリスから、ホフマン、ポー、カフカへと通じるロマン派怪奇小説の流れにあるだけに奇抜でワケ判らんかったな、言葉だけだがバガヴァッドギータ、アトランティスがチラリと登場していて当時流行していたのかもしれない、あとは表紙の解説文通りです…2022/04/11
彩菜
14
昇天祭の日、アンゼルムスは恋に落ちる。金緑の美しい小蛇、青い瞳のゼルペンティーナ。これを契機に彼は、火の精と魔女と魔法の幻想世界へ迷い込む。幻想?幻想だろうか。あなたは誰かを愛した事があるだろうか?その愛は世界をこんな風に輝かせなかっただろうか?彼女の部屋は花の香りで溢れ、彼女は高貴な姫のよう。そして愛によって生まれたあなたの中の詩人の心は、世界の調和と自然の神秘と永遠を、あなたに教えてくれるだろう。そう「詩の中では、この世のあらゆる存在が清らかな調和をとげ、それが自然の奥深い神秘となって現れ」るのだから2019/05/12