出版社内容情報
リンカーン奴隷解放宣言から四○年後の一九○三年に，魂をもつ人間としての黒人を高らかに宣言した書．黒人の本質とその差別の現実が，十四のエッセイによって深く考察された名著として，綿々と読みつがれてきた黒人論の古典である．W．E．B．デュボイス（一八六八―一九六三）は黒人運動の指導者としても活躍した有数の社会学者．
内容説明
黒人の本質とその差別の現実を深く考察し、魂をもつ人間としての黒人を高らかに宣言した名著。リンカーンの奴隷解放宣言から４０年後の１９０３年に刊行され、今日まで綿々と読みつがれてきた黒人論の古典である。Ｗ．Ｅ．Ｂ．デュボイス（１８６８‐１９６３）は黒人社会研究の先駆者であり、黒人運動の指導者としても活躍した有数の社会学者。
目次
われわれの魂のたたかい
自由の夜明け
ブッカー・Ｔ．ワシントン氏その他の人たち
進歩の意味
アタランタの翼
黒人の教育
黒人地帯
金羊毛の探索
主人と召使の息子たち
父たちの信念
最初に生まれたものの死去
アレグザンダー・クラムメル
ジョーンの帰還
哀しみの歌
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
21
黒人初のハーバード大学博士号取得者であり、アトランタ大学で教授を務め社会学者としてまた「全米黒人地位向上委員会」創立メンバーとしても活躍したデュボイスによる、当時（発刊は１９０３年）の黒人たちの姿を多角的に描いたスケッチ＆エッセイ集。白人に対して妥協的であったブッカー・T・ワシントンに対する批判や、黒人の教育について、黒人の聖職者アレグザンダー・クラムメルの小伝、短編小説風に北部で教育を受けた黒人の末路を描いた「ジョーンの帰還」などが収録されていて、当時の黒人差別のリアルな状況をよく伝えている歴史的な本。2021/06/09
壱萬参仟縁
21
１９０３年初出。 学問（ブック・ラーニング）は、 無知から好奇心、知識欲という熱望になった。 理想の興隆（２１頁）。 見た目の肌の色の違いは、 無知でなければ、偏見を跳ね返せるのだ。 労働・教養・自由を同時に（２５頁）実現するには。 仕事と富とは、土地をもちあげる梃子。 勤倹と労役と貯蓄は、希望と可能性への近道（１１２頁）。 真の教育とは、大学人を大衆教養の伝達者として、 職人を農奴たちの自由な労働者として 仕立て挙げること（１１９－１２０頁）。 2014/04/24
てれまこし
8
白人でも驚く古典的教養を身につけた黒人の「学者」の魂は分裂しているだけではない。下手をすると白人の猿真似になりかねない。だから、白人でもなく黒人でもない、そして白人でもあり黒人でもある存在になろうとする。より普遍的な人間たらざるをえない。差別のある社会では、この自我の統一の問題はほとんど解決不能であるが、これが差別される人々へある種の「高貴さ」を与える。虐げられるが故に、より人間的な存在たりうる可能性を示唆する。黒人がそのように悩む存在であることを知らされた以上、差別する側の道徳優位性は揺らがざるをえない2018/10/20
Yusuke T
4
ブッカー・Ｔ・ワシントンの自伝「奴隷より身を起して」を読み熟考の上で、ワシントン批判の第三章のみ再読。確かに見方によってはこの批判は正論なのだろうと思う。しかし、ワシントンのように幼少の頃から不条理の中で死と向き合った事のある人間からすると、このような批判は所詮安全圏にいながら分析をしたただの結果であり本質的ではない空論のように見えてしまうと感じる。 また数年後に読んでみようと思います。2024/05/16
の
4
リンカーンの奴隷解放宣言から40年間のアメリカ黒人の置かれた状況を踏まえ、黒人の自我意識を目覚めさせようとする本。アメリカで成功するには白人のアメリカ流の態度を持たねばならず、黒人と白人の間には大きなヴェールがあると語る。そしてその態度は黒人にとって自己を他者の目によって見る感覚を強要され、自己の魂を与えてはくれない。そうした自己の二重性がアメリカ黒人の歴史であり、自我意識に目覚めた人間になり真実の自己に統一しようとすることが著書の目的。13章では物語的な具体例があり、魂のカタルシスが得られる。2011/05/10
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- 和書
- 瑞鳥 - 田村雅之詩集
