出版社内容情報
絶妙のプロット,独特のユーモアとペーソス.この短篇の名手(一八六二―一九一〇)は,時代と国境をこえて今も読者の心を把えつづけている.それはしかし,単に秀抜な小説作法の故ではないであろう.彼の作品には,この世の辛酸を十分になめた生活者の,ずしりと重い体験がどこかで反響しているからである.傑作二○篇をえらんだ.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
97
有名すぎて却って敬遠ぎみだったオー・ヘンリー、今回その諸作品に触れて読書の楽しみを再認識することが出来た。一寸ばかり技巧を凝らし気味で物語の落ち着く先がわかっていても猶、作者の筆にほろっとしたりどきどきしたり…出来すぎた結末を予感させる“水車のある教会”ではその思った通りの結末にも関わらずあふれる涙が止まらなかった。すさんだ現代のミステリに慣れきった自分にはこんなふうに物語が進行するとは思いもよらなかった“赤い酋長の身代金”の驚きと可笑しさ…それぞれに味わい深い短編の数々に楽しい時間を過ごすことが出来た。2016/09/14
優希
72
心に残る話が多かったです。中には厳しいものもありますが、多くが心あたたまる話ばかりでした。独特のユーモアと物悲しさが短い話の中に詰まっていると思います。恵まれない人生を過ごした著者が描いた作品は優しいまなざしで満ちているように感じました。『賢者の贈りもの』はやっぱりいい話でじんわりきます。美しい文章で語られる短編の数々は現代の寓話とも言えるかもしれません。2014/12/24
cockroach's garten
48
アメリカ文学を代表するO・ヘンリー。彼はたった数ページに巧く物語の起伏を織り交ぜ、まとめ上げる。その物語自体はごくありふれた話で、荘厳な物語は一つもない。だからこそ、読者は己を顧みて、シンパシーを感じるのだろうか。それにしても、これほど広く読まれているのには、物語全般の普遍性と簡潔な文章で、読みやすい仕上がりなのだから。それは間違いないはずだ。それと、訳者のセンスも良い。ただ、不満があるとしたら、(これは岩波文庫全般にあてはまるが)文字が小さく疲れてしまうこと。そこだけ。2016/06/12
mt
47
十数頁の中で物語を収めるだけでも難しいのに、様々な境遇の人々を主役に立てる懐の深さはさすがだ。まずは、巧みな出だしで引き込まれ、温かい眼差しと、洒落た比喩と癖のない洗練された文章で読み手を掴む。一つの短篇に思わず唸ってしまう表現が必ずある。結末の好みは、読み手によって評価が変わるのは致し方ないが、深い余韻に浸れることが多かった。「最後の一葉」や「賢者の贈りもの」があまりに有名だが、この二十篇の中にそれ以上のものが見つかるかも知れない。心が暖まる短篇集はこの季節に読むのがぴったりだ。2015/12/16
ちくわ
45
自分は海外古典をよく読むが、決して日本文学が嫌いな訳ではない。作中に描かれる人々の暮らしぶりや当時の文化を知るのも好きで、特に日本史の知識しか無い自分には海外文学の方が新鮮な発見が多いから…ただそれだけ。 さて今回はオー・ヘンリー短編集…各話10頁程度で隙間時間の活用に最適であった。庶民の悲哀を描いた作品が多く、物語としての面白さに加え当時のリアルが伺い知れて楽しめた。また賢者の贈り物や最後の一葉等多くの作品に既視感があった…当時は全く意識していなかったが、彼の作品やオマージュに昔から触れていたのだろう。2024/02/01
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