出版社内容情報
ペルーでいちばん美しい橋が,ある日突如壊れ5人の通行人が不慮の死にあう.その惨事の目撃者は,彼らがなぜ死なねばならなかったか,その理由を究明しようとする.こうして明らかになってゆく犠牲者たちの内面生活を綴ったワイルダー(1897‐1975)のこの小説は,現代アメリカ文学から連想する逞ましい野性や冷酷な写実は見られず,古典的香気が豊かである.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読書家さん#lfJKjP
4
サンルイスレイ橋崩落に纏わる話だったのですがなかなか入り込めず旧字体も災いしたのか自分には合わず読後の余韻も感じられませんでした。名作だと存じて傍、少し残念な思いと同時に理解出来る迄の自分の愚かさを憎みます。又読みたい時期があらば再読してみたいと思います。2022/01/01
Hotspur
3
ソーントン・ワイルダーの1927年作品。翌年ピュリツァー賞受賞。とても20世紀アメリカの作家の作品とは思えないちょっと奇妙な作品。岩波文庫邦訳の古めかしさが妙に本作にマッチしている。舞台は18世紀初頭のペルー。本書名の名高い橋が崩壊して5人が犠牲となるが、そこに神の摂理を探ろうとするある修道士による犠牲者の評伝の体裁を持った、歴史小説と言うか伝奇小説と言うか。その摂理の探求自体は結局曖昧なままだが、犠牲者たちの死によって取り残された人々の覚醒が不思議なカタルシスをもたらす。なかなかに味わい深い。2021/06/29
ルナティック
3
これはね・・・私の読書人生で傑作の一つでしょうね。読み終わった瞬間「やられたッ」的打ちのめされ状態に。「愛」がテーマには違いないが、「愛」ってこんなに奥深くて、素晴らしくて、哀しかった?と思った。恋愛ではないのよね。ここまで「愛」を昇華している文章を読んだことが無い。戦争もの専門な私でも、「愛」を考えてしまった。特に、最後の文章は、国や宗教等々に関係なく、愛する者がいる人なら、泣き出してしまうような美しさを持っている。ここまで美しい作品に出会えて感謝。私の心の中で、最高の場所に置いてある。神聖な一冊です。2014/03/10
パン太郎
2
突然崩落した橋にたまたま居合わせた人達。遡ってそれぞれのエピソードが語られます。それぞれの人生があり、紆余曲折を経て、ある一点に達し、その時を迎える。その人が選ばれた理由があるのかないのか、この辺りを掘り下げるには信仰が必要なのかな、とも思いますが、無いなりの読み方もあるでしょう。2023/04/16
ドント
1
ウワーッ。まったく素晴らしい小説だった。ペルーの街道筋に架かる名所、サン・ルイス・レイ橋が突如として崩落。渡っていた5人(3組)が犠牲となる。その悲劇を間近に見ていた修道士は、「この事故が何故『彼ら』の身に起きたのか?」「神の意思なのか偶然でしかないのか?」と悩み、彼らの半生を調べ上げ綴っていく。5人と彼らの周りにいた人々の人生・性格とが細やかな造形と描写によって立ち上がってきて、文章の力・表現の力が満ち充ちている。その末に着地するの当たり前の地点のようでありつつ、それゆえにしなやかで、力強い。復刊希望。2020/08/21