内容説明
「あたし、アラバマから来たんだ。すごく遠くまで」自分を棄てた男を追って、ひとり旅する娘。白人か黒人か、自らの血に苦しむ孤児院育ちの男。狂信者として排斥された元牧師。相容れぬはずの三つの物語が、運命に導かれ、南部の田舎町で邂逅する。
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
42
初フォークナー作品。自分を孕ませて逃げた男を追ってアラバマからミシシッピまで歩いてきたリーナ。20歳だというのに、男の身勝手を見抜けないんかい?とイラつく。そんなリーナを気遣うバンチを通してハイタワーなる信頼できそうもない牧師が登場。え!?リーナの話じゃないの?と思っていたら、後半はむごい生い立ちのジョー・クリスマスの話に移る。意識と無意識の中間のようなクリスマスの想念は、不安と危険なものを感じさせる。黒人差別が当たり前の日常が詳しく語られる南部の様子が、不快でもあり不穏、という上巻だった。2025/05/28
南雲吾朗
21
他の本に浮気をしていたら読み終わるまでに予想外に時間がかかってしまった。決して、内容がつまらないとか、読み難いとかではない。むしろ、すごく引き込まれる本である。ちゃんとした感想は下巻を読んでから…。2017/10/25
吟遊
19
なんというか、フォークナーってなかなか入りにくいなというイメージを『熊』でもったけれど、この作品はまたなお入りにくい…。あらすじも登場人物の関係もわかるのに、感情移入できないし(それは仕方ないが)、物語に突き放されている感じが強い。池澤夏樹さんはフォークナー大好きだよね。ぼくは池澤さんが好きだから、読みどころ?を心得たい。2017/09/13
蛇の婿
18
新潮文庫版の本を2冊ほど風呂場で水没させてしまい、買い直すのが嫌になって岩波文庫版で最初から再読w 冒頭登場のリーナはすごい大好きなんですけどクリスマスの若かりし頃のエピソードはなんだか単なる胸糞話で読み進めるのがつらいこと辛いこと…この巻の中盤から最後まで続くのだ…いや勿論人格形成であるとか人物理解に必要な話で登場時のクリスマスの印象がだいぶ変わったのは良かったのですけれど。この後の本筋の展開でああなるかこうなるかも気になるところ。下巻に突入!2019/09/22
みつ
17
今回で三度目の『八月の光』(前2回は新潮文庫と光文社古典新訳文庫、今回は岩波文庫。)。同じ著者の『響きと怒り』体験の後は、フォークナー独自の世界も随分読みやすく感じる。冒頭は臨月の女性リーナが開放的・楽観的に描かれるが、表題から想起される明るさはここまで。彼女のたどり着いた町は、「深南部(ディープ・サウス)」の澱んだ、息苦しいまでに濃密な空気感に満ち、不穏さをいやが上にも高める。町はずれで起こった陰惨な事件を述べた後、主要人物の幼少期からの長い回想にはいる。女との出会いが事件にどう結びつくのか。以後下巻。2021/08/23
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