出版社内容情報
サンドバーグ(1878‐1967)は,アメリカ機械文明の象徴ともいうべきシカゴが生んだ詩人.この都市とそこに住む民衆をダイナミックな表現で描き,また大草原の原始的な美しさを歌う.この詩集は黒人や労働者に対する深い愛情を現わし,大胆な詩風によってアメリカ詩壇に清気を送った.ホイットマンの流れをくむ若々しい気迫にみちている詩集.
内容説明
シカゴ―、お前は不埓だとみんなが言う…。ホイットマンの気風をくむ20世紀アメリカの詩人が都市シカゴを、そこに生きる人々を、みずみずしく歌う。
目次
シカゴ詩篇
少しばかり
戦争詩篇
道とその終り
霧と火
影
かつての日々
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
22
今日は詩から始めてみようかな(また岩波文庫です)。「大衆」の一節で、「辛棒強く骨折りつづけている幾百万の貧しい者」(19頁)が出てくる。昨日は坊主ぼろ儲けに頭にきていたので、貧困な遺族を食い物にするのをやめるべきだと強く思った。他に、「パンと賃金のために、打ちのめされ、窒息しながらも働き(略)ほんのわずかな給料をもらうために、喉に埃を呑みこんで、心臓もからっぽのまま死ぬ」(22頁)。労働者を襲う現実。解説によると、著者は「自分で働きながら学業を続け」(219頁)、現代の市民大学院研究員のようである。2014/02/04
ロビン
16
20世紀アメリカの詩人カール・サンドバーグの出世作。貧しい生まれで、芝居小屋の道具係、トラック運転手、ペンキ屋など様々な職業を経て記者となり、のちに詩人として頭角を現した。「世界のための豚屠殺者」ーシカゴに集まってくる種種雑多な民衆ー労働者、店員、女事務員、黒人、色々な国から来た移民たちーを深く愛し、アメリカ庶民が使うスラングを用いて彼らの生きる姿を自由奔放に描いた。初期詩集での、薄給で長時間働かせられる老婆など弱い立場の労働者に対する詩人の同苦の歌には温かいヒューマニズムが湛えられていて、胸を打つ。2023/05/24
有沢翔治@文芸同人誌配布中
4
サンドバーグは職を転々としながら、シカゴの自然や人物などを詩に描いてきた。特に女工などの労働者を描いているが、あまりプロレタリア文学の印象は受けない。むしろ、「おれは民衆だ、暴徒だ」などからは彼ら、彼女らを含め、大衆そのものを扱いたかったと解釈できるのである。https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51536205.html2025/02/28
miyuki
2
力強さに圧倒された。シカゴという人工的発生都市は、人間の動きをみるのに適しているのであろう。そこに流れる都市の空気は、人間そのものである。そこに描かれる人間は、シカゴの人間であるが、それは都市の人間であり、都市の人間の本質なのである。訳文が日本語的癒着語法によっているのが、はたして原文の性質からなのか、訳者の業なのかはわからないが、その口語自由詩の強い語り口は、萩原朔太郎が実現できなかった口語での現代生活情感の力強さ、それなのではなかろうか。米詩は現代詩としてはやく自覚していることを気づかされた。2015/08/08
nightowl
2
下町の風景や人々を冷徹に見つめた作品から、戦争詩を経てロマンチックだったり穏やかな視線の作品が増え作者の感性変化が分かり易く捉えられている。訳も岩波の中では比較的新しく平易なのが有難い。2014/03/08