出版社内容情報
洋々たるミシシッピーの流れに乗って筏の旅を続ける浮浪児ハックと逃亡奴隷ジム.流域の町や村で二人が出会う冒険の数々.辺境時代のアメリカで,何ものにも捉われずに生きようとする少年と,必死に自由の境涯を求める黒人の姿に作者のヒューマニズムが脈打つ.「現代アメリカ文学の源泉」と言われた傑作.初版挿絵を収録.
内容説明
ハックとジムは自由州への上陸に失敗。おまけにペテン師の王様と公爵まで背負いこんでしまった。筏の旅はなおも続く。―ヘミングウェイをして「現代アメリカ文学の源泉」とまで言わせたこの傑作を、練達の訳文に初版本の楽しい挿絵を豊富にちりばめて贈る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
84
初読。2015年1160冊め。【82-2/G1000】面白いことは面白いのだけれど、奴隷問題を扱うにあたってはこれを是とするか否とするか明確な表明がなされていない(時代的にできなかった)ために、ハックの物語にトムの活躍で決着をつけなければいけなかったのが惜しい。「ハックは奴隷を解放したいと思っていたが、それを正面からはできなかった」時代の物語。2015/11/27
ちゅんさん
45
トムが出てくるまではすごく面白かった。解説に"トムが登場してからは読むのをやめた方がいいと言う人もいる"とありやっぱりねと。とはいえ『トム・ソーヤー』のような子ども向けの冒険小説ではない。奴隷制度やハック(マーク・トウェイン)の苦悩が物語に深みを与え老若男女楽しめる作品になっている。これはたしかに古典名作だ。2023/11/15
33 kouch
39
後半はトム・ソーヤが現れて、物語のムードが一転する。モヤが晴れたような冒険ものに。これはこれで気持ちいい終わり方だが… シビアな現実、人間性、背徳感のモヤの中で、文字通り川下りするような…ハックの物語の方が自分的には良かった。マーク・トゥエインはハックの口から社会批判をしたのだろうか。時代背景を考えると非常に感慨深くなる作品でした。読み終えてみると、この自分の感想は、結局著者の警告を無視したものになっている。でも思ったのだから仕方ない。作品も楽しみつつ、そう感じたのだから仕方がない。2024/10/09
ちえ
35
様々な人に出会うことで、ハックルベリーの考えや心の成長がある。逃亡した黒人奴隷のジムとともにいること、そして特に後半はハックの良心の呵責。川を下る筏の旅、出会う人々や事件という冒険小説の面もあるが、この時代の奴隷制度という社会問題、人間性も描かれている。最後にいきなりトムが登場するところはいただけない。◆ガーディアン必読選書10002023/12/27
シュシュ
34
面白かった!飲んだくれで暴力をふるう父親から逃げるハックルベリー・フィンが黒人奴隷のジムと一緒に筏でミシシッピ川を下っていく。ハックは自由を求めて父親から逃げ出したけれど、自分の好き勝手に振る舞うのではなく、いつも良心を持っていて、そのせいで面倒なことにも巻き込まれる。とてもいい奴のハック。ワンピースの麦わらのルフィーのようでもある。トム・ソーヤの登場の場面から、一転して、やんちゃな子どもの世界になった気がした。奴隷のジムを助けるためにトムが考えたことといったら…。痛快な冒険物語で結末もよかった。2015/02/15