岩波文庫
スコットランド紀行

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 300p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003229613
  • NDC分類 935
  • Cコード C0198

内容説明

スコットランドの北の沖に浮かぶオークニー諸島で生まれた詩人ミュアは、一九三四年、おんぼろ自動車に乗ってエディンバラからスコットランドを周遊する旅に出た。当時のスコットランド各地の印象を伝える貴重な旅の記録。本邦初訳。

目次

第1章 エディンバラ
第2章 南部
第3章 グラスゴーへ
第4章 グラスゴー
第5章 ハイランド
第6章 むすび

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

119
1920年代後半にブームとなった作家による車で回る旅行記。しかし、スコットランドのため息とでもいえる筆致。スコットランドらしさはイギリスを対比としなければ、イギリスの影響を抜きにしては考えられないのだろうか。北の諸島出身のミュアは、自身はスカンジナビア人であるからとスコットランドを客観的に観察しようとしたのかな。だが、彼自身もそのトラップから抜けられずにいるように思った。イギリスへ反感と、イギリスに対して恥ずかしくないようにとの祖国へのから口の二面性。読んでいてかなしみを覚えた。2021/12/16

壱萬参仟縁

9
1935年初出。「田舎の駅の生活の利点は観察力と観察されることへの免疫が生れること」(28頁)。無人駅は利用者が少な過ぎなので観察される人が稀。「庶民は不平を言わない。貧しい凍えた生活と過去への浅薄な無知に満足して」(53頁)。このところの厳冬では満足どころかいのちを落とした雪国の人たちもいたし、私もクルマのバンパーを凹ませた。「社会はすべての階級の位置が永遠に固定した冷酷な鉄の構造ではないと、(略)貧者に納得させるのは至難の業」(117頁)。貧困問題は今は格差問題というが、階級や格差固定だから息苦しい。2013/03/14

Matsuko

7
旅行者ではなく隣人、またはかつて現地で暮らしたことのある者の視点なのでかなり辛辣な印象を受けた。旅情を感じるものではなく、スコットランドの社会や思想に焦点が当てられていて期待していたような内容ではなかったが、失業者で溢れる当時のスコットランドの貧しさ、それに対する上流階級の反応などが著者の鋭い視線で書かれており興味深い。グラスゴーのスラムでの一文が心に残る。「自己中心的な嫌悪感は憎悪よりも冷酷である。スラムを憎悪する人は改善の努力をするかもしれないが、嫌悪する人は顔を背けるだけである。」2018/06/06

ラウリスタ~

7
自分って本当に無知だなとつくづく感じさせられます。スコットランドといえば・・・といった十把一絡げにできるようなものではない。とらえ難さが印象的。工業都市のスラムの描写がひどい。先進国の大都市でもこんな現実があったとは。というか、現在進行形であるんでしょうね。スコットランドへの愛憎入り混じる筆者のスタンスが特徴的。仕事のない人は何を目的に生きていくのかとか社会問題を広く提起している。詩人が書く旅行記はこんなに面白いんだと感心しました。2010/11/12

あくび虫

5
紀行文ではあるのですが、大自然の美々しい描写と、心温まる人間交流……なんてタイプではありません。旅の記録と同じ割合で、著者のスコットランドへの屈折した愛情が綴られています。時代柄がよく現れる、ナショナリズムやら産業社会への私見を述べながら。当然、馴染みのない単語や思想が頻出します。あとがきにて、「経済恐慌時代の社会相をレポートする」ことが目的と知り納得。ーー自然描写は「書き手の感情を表現しているにすぎない」という言葉が印象的でした。確かに。2017/03/15

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/190
  • ご注意事項

最近チェックした商品