出版社内容情報
第一次大戦に従軍した,イギリスの詩人グレーヴズは,軍隊で見聞した残虐行為,友人の戦死といった苛酷な体験を記録する一方で,T.S.エリオット,ハーディらとの交友にも及び,英文学史上の貴重な証言とされる.(全2冊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
4
戦争から帰ってきてから33歳になるまでの物語。いつも気になるんだが、なんでこういう人たちは簡単にオックスフォードに入れるのだろうか、入試とかはなさそうだし。『テス』にもあるようにやっぱり良家の子弟だったら普通に入っていたんだろうか。詩人でたくさんの作品を残している筆者ですが、あえてなのか詩の制作風景はほとんど描かない。詩人の「詩」以外に関する33歳までの自伝というものか。一般読者向けには詩について語っても、と思ったのか?それに加え社会主義、フェミニズムとの接近が面白い点。当時の空気を知るには最良の書。2011/04/21
壱萬参仟縁
1
著書130冊、享年90歳。多作の人。第一次大戦の話で気分が暗くなる。鼻の手術(79ページ)を受けたというが、どれだけ不快、苦痛だったかと思う。鼻中隔湾曲症とかいうことで急性蓄膿症で黄色い鼻汁とかいうのも経験したので。「良心的兵役拒否者は勇敢な人間である」(139ページ)。これは、日本でも憲法改正でもされれば、いつか来た道に戻ると思うので、福一原発作業への招集共々、拒否したいと思う。「官僚社会は排他的で、愛想はいいが庶民には無関心な生き方をしている」(253ページ)。現代日本の役場職員も大丈夫か、とも思う。2013/01/10
qoop
1
詩人である著者の半生記。文学者たちとの交流や、パブリックスクールでの学生生活(「ロマンスは必然的に同性愛になる」上巻p39…など)もさることながら、何と云っても白眉は第一次大戦の従軍体験。死を意識しつつ今を生きる兵士たちの日常が活写されており、圧巻。特に、悲惨な情況での(先鋭化した?)笑いのセンスはモンティパイソンを思い出す。2012/07/20
adhvanya
0
さすがグレーヴスというか、元の文章がいいのか訳がいいのか、とにかく文章は素晴らしい。不要なセンチメンタリズムなしに戦争の悲惨さをここまで簡明に表現しえた文学は他にないのではないか。ヱビスのあとの発泡酒は言いすぎだろうが、これのせいで『西部戦線異状なし』が読めなくなった。あと、アラビアのロレンスの異常なカリスマ性について活写されている点も興味深い。2012/03/01