出版社内容情報
短篇小説に無類の手腕をふるった点で,サキ(一八七〇―一九一六)はオー・ヘンリーによく似ているが,読後感はひどくちがう.彼は,涙と笑いが生み出すあの人生の温もりとは徹底して無縁である.残酷と恐怖,怪奇と不気味が支配するサキの世界をかいま見るものは,思わず背筋の寒くなるのを感ずるだろう.二十一篇を厳選.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
206
鋭敏な人間観察が冴える10頁程度・21篇の短編集。ポケットに忍ばせて、僅かな空白時間を埋めるのに適した本。ほんのちょっとの刺激と、はっとする驚きと…そんなものが心の底辺にポトリと落ちる。簡潔で蛇足がなく、起承転結が明確で気の利いた落ちが用意されている。すなわちウィットに富んだ小噺、もしくは古典落語のような趣。また、怪奇趣味の作品では容赦のない帰結点に息をのむが、その恐怖の手触りはあくまで読者の想像力に委ねる。その眩暈のようなざわつきは、幼い頃暗がりに置いてきぼりにされた心許なさに由来するぞわぞわ感に近い。2020/11/09
kaizen@名古屋de朝活読書会
140
【第2回サキ誕生日読書会(12月18日~21日)】にちなんで手に取る2冊目。掌編小説21話。新潮の「サキ短編集」との重複あり。グレアムグリーン編集”the best of Saki"の38篇中11話あり。著者Hector Hugh Munro(Saki)の話は、面白いもの、共感できるけど面白くはないもの、納得できないものと3分割しながら読んだ。二十日鼠は安心して読める。翻訳・解説:河田智雄。モーパッサン、オーヘンリー、モームとの対比。スコットランド人の作家達。2014/11/20
ehirano1
78
「スレドニ・ヴァシュター」について。抑圧された子供がイタチをスレドニ・ヴァシュターとして神格化し、セーフティネットをこさえるのはある意味必然ではないかと思いました。ある意味、原初の礼拝なのかもしれません。イタチってのがなんだか可愛らしいのですが、実は・・・ね。2023/05/05
nemuro
39
『サキの忘れ物』(津村記久子)を読了。たしか当該する『サキ短編集』(新潮文庫/1958年3月15日発行)が本棚にあったはず。「真面目な顔をして嘘をつく男」サキの世界を堪能。訳者・中村能三氏の「解説」にグレアム・グリーンが選んだ『サキ傑作集』(サキの短篇135編のうち38編)の話があって。久々に訪れた「ジュンク堂書店札幌店」で本書(岩波文庫/1981年11月16日第1刷発行)を購入したのだが、どうやら別物。まあそれはそれとして。「狼少年」「二十日鼠」「開いた窓」「セルノグラツの狼」など鋭い切れ味に抉られる。2024/12/04
メタボン
33
☆☆☆★ 動物が出てくる短篇が多い。必ずオチがあるのも特徴。好きな話は「刺青奇譚」「イースターの卵」「グロウビー・リングトンの変貌」「開いた窓」「宵闇」「毛皮」「セルノグラツの狼」。2022/07/19