出版社内容情報
都会的な喜劇を得意とし,温かい心と洗練された機知で描く人生模様で人気の高かった劇作家バリー(1860‐1937)の本領を示す3篇.「十二磅の目つき」は1910年初演,ユーモアと皮肉に富んだ一幕物の傑作.「遺言書」は1913年初演,人生の皮肉を痛烈に描いた悲劇.「忘れえぬ声」は1918年初演,降神術の流行を背景にした戦争劇.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
11
ピーターパンの作者による皮肉でいて優しい目線を持った人間劇。表題作は独立女性の成功した男性に対する目利きが痛快でいながらふわふわした印象しかなかったその夫人も独立の兆しを見出しているという所が嬉しくなります。失敗をしても何もせずに成功を待つよりましだと思うことは今の世でも稀であり、それができた人にはキラキラして見えるのだろう。2012/09/19
ひつじ
5
皮肉も効いてて面白かった。世界観に入って仕舞えばスッと読める。ただ、正誤はともかく古い翻訳が好きな私でも翻訳が酷すぎると思う。いっそ原文で読んだ方が理解は早い。2021/10/16
Nemorální lid
4
『ピーター・パン』の作者バリが手掛けた諷刺劇はユーモアと皮肉に溢れたものである。確かに現実的では無い所が否めないが、その空想的な芝居は人間の奥深さに根付いた『やさしい心』(解説 p.145)を中心としている。理解と同情に際して十二分持つバリだからこそ描ける人間劇の温かさは登場人物を通じて此方まで伝わってくるものだ。また先見の明に溢れ、ありふれた人間関係に着眼して色彩を施す一つ一つに明るさが残り、暗さが無いのが特徴的である。少し理想化し過ぎているかもしれないが、だからこそ彼独特の世界が今も輝くのだろう。2018/05/19
madhatter
2
再読。バリ自身、作中に「これこれの人物に対する同情は無用」との但し書きを付している場合もあるのだが、時として私はそれを無視したくなる。これは多分、解説にもあるように、彼の諷刺がどこか優しい目を持っているからではないだろうか。殊に失敗者や、顧みられぬ人々の持つ愚かしさに対し、バリは非常に寛容な気がする(「遺言書」の老いたフィリップやロバートなど)。表題作は勿論、「配偶者の価値」という主題が優れた傑作なのは間違いないが、ケイトの台詞はバリのスタンスを反映したのかとも考えてしまう。2012/05/27
takeakisky
1
書肆スーベニア。ジェイムズ・バリの戯曲を読みたいと思っていたので有難く購入。驚いたことに、背景情報と人物の心理が(ついでに言うなら観客への感じ方の指示まで)みっちり書き込まれている。これを台詞だけで伝えることを求められるというのは、大変なこと。読む方は、このリードが皮肉に溢れていて面白さを増す。なかなか台詞だけでは、ここまで読めない。三篇それぞれ、甘やかで優しく、そして苦い。美しい。どれも一幕もの。どれも素晴らしい。暖かく、同時に寂しい気分を味わう。愛されている理由がよく分かった。2025/02/24
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