出版社内容情報
本当のジェントルマンを作り上げるための全人的教育制度をもって誇るパブリック・スクールの生活が作者(1822‐1896)自身の体験に基づいていきいきと描かれている.そしてこの教育の成果は,本篇の主人公トム・ブラウンの成長の過程が雄弁に物語る.少年社会のあふれるユーモアと,底を流れるキリスト教精神と,スポーツ精神の調和が高い香りを放っている名作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
109
まず学校に入る前でのトムの無鉄砲さがどのように形成されるかが、トムの武勇伝とともに描写されている。その形成を担うのは、母の賢さと大らかさ、父の物の考え方、彼の周りの老人たちの唆し。すべて面喰らうほどのレベルである。そんな彼を待つ私立学校の校長も、まさにトムのために用意されたような人物。少々作りすぎかなと思わなくもないが、彼の破天荒な学校生活はやはり面白い。2016/12/08
NAO
53
前半は長々と説明口調が続き、ちょっと飽きるが、トムが私立学校周辺でいたずらを仕掛けるあたりから、話はおもしろくなってくる。パブリックスクールに入るにあたっての父の言葉は、理想を追い過ぎず、父としての優しさに溢れたもの。なかなかこういうことを息子に語ってやれる父はいないのではないだろうか。いじめ問題、行事、日々のお茶の時間の賑わいまで、パブリックスクールの教育制度、実態などのリアルな描写が興味深く、面白く読めた。2016/09/21
壱萬参仟縁
5
旧字体。私が私立学校の校長だったら、「生徒らが遊んだり休んだりしてゐるときに、一緒にゐてやる仕事は私にさせてくれといひたい」(78ページ)。昨今、体罰いじめ問題深刻だというが、こんなリーダーなら校風を伺い知れるだろう。自由(ゆとりとは言わずに)がなさすぎるのが原因に思える。「私は、我らの時代にあった通りの学校を描いてゐるのであって、善いことも悪いことも、正直に書かねばならない」(224ページ)。評者は偽善者を嫌っているので、この態度は見習うべきだと思える。隠ぺいする管理職らは責任をとっていないだろうなぁ。2013/02/08
W
3
下は11歳、上は17歳?(ホグワーツと一緒か)までの青少年が集団生活するとこうなるよ、という話。強い縄張り意識、ホモソノリなど、時代と国が違えど共感する描写も多かった。主人公がへこたれない、やんちゃ坊主なので楽しく読める。イギリスで何度か映像化されているようなのでYouTubeで観てみる📝2025/02/04
watson
3
まだトムが心身とも幼く、原始的ラグビーや上級生による苛めなど内容にも乱暴なところが多いためか、下巻に比べ好きになれない。もっとも、郷士や私立校の内情について紙幅を割くあたりの資料的価値は高い。2016/09/30