出版社内容情報
故国の政争をのがれて冒険に身を投じた青年アベルと野性の美少女リマが,南米ヴェネズエラの神秘に満ちた密林でくりひろげる悲恋の物語.『ラ・プラタの博物学者』で有名なイギリスの作家ハドソン(一八四一‐一九二二)の名を世に出した作品で,物語からあふれでるロマンチシズムの香りは,読む人すべてを酔わせずにはおかない.
内容説明
故国の政争をのがれて冒険に身を投じた青年アベルと野生の美少女リマが、南米ヴェネズエラの神秘に満ちた密林でくりひろげる悲恋の物語。
著者等紹介
ハドソン,W.H.[Hudson,W.H.]
1841~1992年。「ラ・プラタの博物学者」で有名なイギリスの作家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
315
物語の舞台はヴェネズエラのオリノコ河上流域。密林の中に忽然と現れる妖精のような不思議な少女。しかも彼女はどうやら動物たちとも意思の疎通ができるようだ。故国から逃れてきた青年アベルと、その無垢な少女リマとの恋物語。もうこれでもかというくらいのエキゾティシズムの中で展開するロマン溢れる物語がこれ。1904年の出版ということなので、当時のイギリスの読者たちには大歓迎されたかもしれない。しかし、今読むと、白人の優越感に裏打ちされた未開地探検物語+ピュアな未開人との恋といった浅薄な図式ばかりが目についてしまう。2017/03/14
まふ
100
学生時代に読んで強い印象を受けて以来。舞台はヴェネズエラのオリノコ河上流森林地帯。主人公アベル氏は「不逞ヴェネズエラ人」(英国人ではなさそう)とされている。アベル氏がジャングルの奥地にさ迷った時に現地人の美しい娘リマに遭遇する。だが、この美女はインディオなのか正体不明だ。物語はこのリマとの甘くも悲しい出会い、睦みあい、別れという一連の流れをジャングルの奥地で過ごすことになる…。が、どこか、しっくりこない。実体感が湧いてこないのである。期待しすぎていたからかもしれない。G567/1000。2024/07/18
さつき
75
主人公のアベルは政争に巻き込まれて放浪するベネズエラ人。彼がインディオに徹頭徹尾持ち続けている優越感には辟易します。彼らの好意で寝食を得ているのに最初から手玉に取ることしか考えていない。地球上にある一木一草に至るまで白人だけの物だと思っている。この体であちこち侵略したのだろうと思うとひたすら恐ろしい。物語自体は一夏の恋物語。白人男性の考える妖精のような美少女リマは全く現実感のない存在。彼女の心情は最後まで私には掴めませんでした。いくら20世紀初頭の作品でもこの作品が娯楽小説として読まれたことに驚きます。2020/09/07
NAO
67
文明社会から逃げてきた青年アベルが魅かれた自然そのものの美女リマ。絶滅した民族のたった一人の生き残りであるリマの輝きは、なにゆえだったのだろう。彼女は、自分が一人ではないと思い続けてること、いつか仲間に会いに行くのだと思うことで輝き続けることができていたのだろうか。その希望が断たれたとき、彼女の超自然的な力も消えてしまったのだろうか。リマは、熱帯の自然の神秘そのものだったのだろう。そして、誰もがたった一人では生きてはいけないということの象徴でもあるのだろう。2018/12/16
白のヒメ
38
文明社会から亡命してきた白人の青年が、ジャングルの奥底で見つけたのは、妖精のように美しい蛮人の少女だった。青年が「緑の館」と名付けた、息が苦しくなるような鬱蒼とした濃い緑の中、二人はお互いに惹かれあう。しかし、少女には周りの他の蛮人が恐れて避ける秘密があった。・・・古典的な悲しい愛の物語。とても情緒的で美しく、始終うっとり。メランコリック、ドラマティック、ロマンティック、そんな類の語彙が全て当てはまる。オードリー・ヘップバーンが主演で映画になったのだそう。もう、イメージぴったりです。2014/09/07