出版社内容情報
まんまとベッキーは名家の次男と結婚，持前の才気で社交界を昇りつめてゆく．一方アミーリアには悲運が続く．戦争で全欧は震撼し株価が暴落，実家は破産，やがてワーテルローから夫戦死の報が…傑作長篇，前半の山場へ．新訳【全4冊】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
203
ナポレオンのフランス上陸で 世界が揺れる中、 二人のお嬢様は 相変わらず 虚栄の中で 精一杯に 生き続ける。 野心と才覚に優れたレベッカと、清楚で おしとやかなアミーリア… 結婚生活も 当時の情勢に影響を受ける… 劇場で物語を聞いているような、この展開、 パリの社交界で 男を味方につけていく レベッカが小気味良い。 2018/05/08
ケイ
134
レ・ミゼラブルと時代がかぶるのだな。1815年。この時をイギリス側からサラリと書くとこうなるのか。さて、日本語だと｢虚栄の市｣だが原題は「Vanity Fair｣ まさにVanityな世界が広がる。アミーリアですら、責められるべきだろう。なぜなら彼女は何より自分の幸せを優先したのだから。まさに虚飾に満ちた世界で花開くために必要な潔さと身勝手さを兼ね備えたレベッカ。しかし、虚とは虚しいもの。どこでそれが明らかになるのやら。2017/10/25
のっち♬
121
首尾良く名家の次男と結婚して社交界に繰り出すレベッカに対して、実家の破産と夫の出兵に見舞われるアミーリア。性格や出自にはじまり、二人は真逆の人生を歩んでいくために物語の筋は次第に分離してゆくのだが、双方の人生の浮沈が明確なコントラストを成しているのがユニークなところ。また、愚鈍と盲目故に恋慕も献身も全く感知しないアミーリアに報われない愛情をひたすら捧げ続けるドビンも物語の大きな立役者、レベッカの本性に勘づいているのが彼だけという設定も絶妙だ。著者の「持ち場は非戦闘員の方」とのことで戦闘描写がないのも潔い。2018/04/01
NAO
55
金銭的なことよりも愛を優先して（させられて）アミーリアと結婚したジョージ。叔母の遺産を当て込んだロードンと極秘結婚したベッキー。どちらの夫婦も危うい経済的状況にある中、つましく暮らすしかないアミーリアと、世渡り上手でどんどん社会へ乗り出していくベッキー。虚栄の市では、ベッキーのような人間こそが、のし上がって行けるのだろう。ときまさに、ナポレオンがエルバ島を脱出し、ヨーロッパは再び戦の渦に巻き込まれていく。それもまた虚栄の市の一コマ。ベッキーの未来はなんとなく想像できるが、未亡人となったアミーリア未来は？2016/12/25
星落秋風五丈原
35
【ガーディアン必読1000冊】ベッキーが自分の分を弁えずお気に入りの甥っ子と結婚したと知ったミス・クローリーは大激怒。彼女の怒りに火を注ぐのは、ピット卿の弟の嫁クローリー夫人。それでもちゃっかりベッキーは叔母さんの遺産をあてこむが。ジョージとアミーリアの結婚もてっきりなしになるかと思いきや、なぜかジョージの学友ドビン氏が一肌脱ぐ。嫌だドビン氏そんなにいい人でどうするの。あなたこそエミーリアが好きなくせに。こんなに自己チューな人ばかりなのに。そんなんじゃ世の中渡っていけないよ。2023/12/09
