出版社内容情報
貧しい生家からマンスフィールド・パークに引き取られたファニー。優しい従兄エドマンドを心の支えに、華やかな従姉たちの陰でひっそり成長する。だが近隣の牧師館に新たな住人が現れて以降、人間関係は変わり始め--。オースティン(1775-1817)作品で〈もっとも内気な〉主人公を描く。時代背景の丁寧な解説も収録。(全二冊)
内容説明
貧しい生家からマンスフィールド・パークに引き取られたファニー。優しい従兄エドマンドを心の支えに、華やかな従姉たちの陰でひっそり成長する。だが近隣の牧師館にクローフォド兄妹が現れて以降、人間関係は変わり始め―。オースティン(1775‐1817)作品で“もっとも内気な主人公”を描く。時代背景の丁寧な解説も収録。(全2冊)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
297
本書の刊行は1814年。およそ200年前である。ここに流れる時間は現代と違って随分ゆるやかだ。この時間の流れに身を委ねていること、これぞ19世紀小説の醍醐味である。さて、物語はイングランド中部の田園地帯マンスフィールドを舞台に展開する。主人公は(主人公と呼ぶほどには際立たない存在なのだが)この地の準男爵バートラム家に引き取られた少女ファニーである。彼女は、他の誰よりも感受性に富んでいるのだが、それは表面に表されることはなく、あくまでも内に秘められている。行動もまたそうだ。そして、そのことが逆に他の人たち⇒2024/07/11
まふ
114
トマス・バートラム準男爵に引き取られた姪のフランシス(ファニー)が一家や近隣縁者の中で遠慮しながら目立たずに生活しているうちに次第に心身ともに美しく思いやりのある女性へと成長し、軽薄の典型のような裕福な若い男から突然結婚を迫られて慌てふためく、というところで上巻が終わる。1814年発表の作品であり、世界はナポレオン戦争後の殺伐たる状況だがジェイン・オースティン・ワールドの心地よい展開とせりふ回しを楽しめて別世界的体験ができる。面白い。下巻が楽しみである。G1000。2023/12/08
みつ
32
同じくオースティン作『エマ』に引き続く形で読み進む。主人公エマが人の恋愛関係に首を突っ込みたがるある種お節介やきであったのに対し、本作のヒロインファニーは、子だくさんで貧しい一家の家計を助けるためにも姉の嫁ぎ先である一家に身を寄せたこともあってか、内気な性格に万事控えめな行動が加わり、多くの登場人物がひしめく中で、背景に退いている。従兄のエドマンドには親しい感情を寄せる一方で従姉妹たちとも、エドマンドの友人やその妹ともどこか打ち解けないまま。もっぱらディナーと舞踏会を中心にサロンの様子が描かれていく。➡️2023/12/01
ジェニィ
28
内気な少女ファニーが地方権力者に引き取られそこでの中・上流階級の人間模様が描かれる。引っ込み思案な主人公であるためか、「自負と偏見」のような山あり谷ありの展開は見られないものの温厚従順なファニーと読者の有機的な結びつきが強い分エドマンドの優しさでファニーの内的調和が保たれる多くの箇所は強力な治癒力を持つ。権力と威厳を兼ね備えるサー・トマスとその無気力な妻の存在により、物語は全体的に父権性を帯びたジメジメ感があるが故にユーモアは不可欠。ファニーが女たらしのクロフォードから真剣な愛の告白をされ、下巻へ続く。2024/03/07
きゃれら
22
ジェイン・オースティンの新刊、ということで手に取りました。もちろん200年以上前の本ですが。「自負と偏見」の勝ち気なヒロインとは対照的な超内気な主人公。その様子がかえって、嫌っているプレイボーイの心を射止めてしまうという展開。味方になってくれるはずの母親はいないし、替わりのオバさんたちがあまりにも俗物で全く役立たず。唯一の女友達がなんと恋のライバル。と書いてると、平凡な恋愛小説みたいですがさすがは古典というよりない読み応えです。来月出る下巻が待ち遠しい。(と、オースティン作品で言ってみたかった。)2021/11/26