出版社内容情報
スノーダンの騎士フィッツ・ジェイムズと名乗って国内を旅するスコットランド王,辺境の猛将ロデリック,白面の貴公子グレアムの3人が,白樺茂るカトリン湖の孤島の少女エレンを中にして,恋と武勇を競うという,騎士道はなやかなりしころの物語.全体は6歌よりなる.1歌を1日の事件に当て,6日間の出来事として語る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱせり
13
騎士の前に小舟を漕いで現れたのは麗しい乙女。宮中の貴族達の思惑や、騎士の正々堂々の一騎打。思いがけない出会いもあれば、驚きの展開もある。そして、物語に相応しい荘重な文章。戦いのあたりから、これは悲劇の物語?と思ったのですが・・・まさかの展開で、そんなの、もうちっとも予想がつきませんでした(笑) 洒落たことをなさいます。王さま・・・初めてのウォルター・スコット。大満足の読書。2009/06/29
rinakko
7
とても素晴らしかった。陶然たる余韻。あくがれる魂が遥かな時を超え、古の蘇格蘭まで彷徨っていく心地は格別だった。心昂るがままに言葉が湧き出でた即興歌の豊かな詩情を味わいつつ、竪琴の旋律をうとり…想像しながら隅々まで堪能した。歌を愛する人々の物語。角笛の響く湖上、銀の波間に落ちる月、ヒースが靡くもの寂しい山腹、エニシダの叢、岩また岩の荒野原…という、峨々たる稜線に囲まれた風土の、峻烈な美しさも忘れがたい。血腥い戦や男たちの争いを描く昏い色調の中、“湖の麗人”エレンの花のような可憐さが白く際立っていて感嘆した。2012/08/01
kazutox
5
1810年の作品、1936年訳。クラシック音楽趣味の一環として読みました。シューベルトはドイツ語訳のテキストから歌曲を5つ作曲。ロッシーニによるオペラもあり。原文はすべて韻文で、この訳では歌の部分を詩として、物語部分を散文で訳しています。翻訳は格調高いけどストーリーはつまらんだろうなと予想してましたが、けっこう楽しめました。2024/05/29
syaori
4
「はしがき」一行目の「蘇格蘭」(スコットランド)で挫けそうになりましたが面白かったです。お話は、狩で森の奥深くに迷い込んでしまった騎士を美しい少女が助けるところから始まります。少女と騎士のロマンスが始まるのかと思ったら、さにあらず、彼女には心に決めた御方がいるのでした。しかしその彼が全然活躍しないので、恋敵のロデリックでいいんじゃないかと思った私はロマンスの何たるかが分かっていないです。人々の思惑が絡み合って、最後まで気をもみましたが、王様が粋な計らいで万事上手く収めてくれました。王様、素敵です。2015/11/12
きりぱい
3
ハイランドと聴くだけでなぜだか期待に高ぶってしまうのだけれど、それは別にして、自分がどれだけイメージし切れているのかわからないほど美しい叙事的な文にまいった。フィッツ=ジェイムズとロデリックのまさかの対面と、騎士たる緊迫した対決に息を詰め、どどどっとラストに向かっては、エレンの哀願の辺りから何やら感じつつも、ああやられた!と仰天の真実。フィッツ、うろうろしすぎだよーと思いつつ、よかった、これは。2009/06/07