岩波文庫
ジョウゼフ・アンドルーズ〈上〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 336p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003221150
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

“英国小説の父”とも呼ばれるフィールディング(1707‐54)。この小説は、当時人気を博していた書簡体小説『パミラ』に対抗して書かれた。人間性に対する鋭い洞察、真実に徹した精神を喜劇の衣に包んで表現。虚飾を嫌い、庶民の大らかな善良さを愛する作者の意識が全編を覆い、“物語”を読む原初的な楽しさに満ちている。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

364
フィールディングの作品執筆の発端は、たしかにリチャードソンの『パミラ』への対抗心からであったかも知れないが、おそらくは書き進めるうちに近代小説の範としての『ドン・キホーテ』の小説作法に近接していったものと思われる。ただ、『ドン・キホーテ』が持っていたヒロイックで、壮大なまでの荒唐無稽さが、ここでは宗教的な意味合いも含めて、より内省化された形で表出されているのだろう。これこそが、18世紀のイギリス小説なのだろうが、読んでいて、これを十全に堪能する素養が自分には欠けているのではないかと、内省する次第である。 2019/01/11

ケイ

111
各章ごとにクスっと笑いを誘うもたまに辟易するレベルまで御託を並べる人だけれど、面白くても一日で小説を読んでしまうなという読者へのご意見には苦笑い。だって面白くて一気にいきたかったものだから。御託に従い、一日に一章ずつ読んでいる。さて、これは珍らしく純潔を守る男子の話。誰からって、特に自分より身分 も年齢も高い女性たちから。思わず女性をそんな気分にさせるジョウゼフ。一番の読みどころは、牧師のアダムズ。ジョウゼフの後ろ盾となる高潔な人格者かと思いきや、熱き血のたぎる男。この人が次々と頁を捲りたくさせる犯人だ。2016/02/22

のっち♬

61
リチャードソンの『パミラ』に反感を持った著者が、そのヒロインの弟を主人公に設定して執筆した作品。姉の夫のおじ夫婦の元に奉公に出ていた主人公は、当主が死ぬとまもなく女主人から求愛され、拒絶すると屋敷から追放される。彼が貞節を守るくだりはかなり滑稽だ。そこに副牧師が加わって繰り広げられるセルバンテス的な珍道中が主軸になるのだが、一行を滑稽な事件に巻き込む副牧師の造形が実にコミカル。敬虔で腕っぷしは強いが健忘症が酷く、世俗離れした言動で度々滑稽な事件を起こす彼の存在が、話に愉快さと活気を大いにもたらしている。2017/12/28

NAO

51
当時大人気を博していた『パミラ』のパロディ本。主人公は、淑徳の誉れ高いパミラの弟(本編には、弟がいるという記述はない)。姉と同じB家一族の屋敷に仕え、女主人に言い寄られ、自分は姉さんのように貞節を守ると姉に当てて手紙を書くなど、徹底的に『パミラ』で遊んでいる。だが、一番笑ってしまうのは、女主人に対して「ぼくを誰だと思っているんです。パミラの弟ですよ!」と言うところだろう。パミラの過剰なまでの貞操感を知っていると、あえて男である弟にこんなことを言わせている作者の遊び心に、思わず手を叩いて笑ってしまう。2016/03/28

秋良

17
【G1000】英国小説の父と呼ばれるフィールディングの代表作。イケメンだけど貞淑なジョウゼフと、人は良いけど抜けた所のあるアダムズ牧師が送る珍道中。滑稽な展開が多いものの主人公が貞淑という設定のせいでジョウゼフ自身に面白みがないのと、出会う人物のキャラクターにパンチが足りないのとで絶賛されるような面白さは感じられない。のちにディケンズ等に受け継がれていく潮流を作った点で、こうして残っているのかもしれない。2023/09/14

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