出版社内容情報
トムは捨て子だった.金持ちの家で快活な少年に育つが悪友のために勘当されて旅に出る.物語は無数の事件やエピソードがからんで発展し,トムの生活も波瀾万丈である.しかし彼は常に純情で小気味よい性格をもち続けて読者をひきつける.フィールディング(1707‐1754)の視野の広さ,精神の健康さが人間性の真実を写し出す.18世紀イギリスを代表する名篇.
内容説明
生活を援助してくれるベラストン夫人が実は若い男を漁る「何でも食い」。一方、ソファイアはいやな結婚を無理強いされ…。ジョウンズとソファイアを結ぶ運命の糸は縺れに縺れ、さて、この人生双六の上りにはどんな趣向が仕組まれているのだろうか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
50
最終巻は、とにかく波乱づくめ。これまでの3巻分よりもずっと凝縮した内容で、次から次へと事が起き、過去の真相が明かされていく。主人公のトムは、「聖人君子ではない」というしばりを作ってしまっているために、かえって中途半端な性格になってしまっているような気がする。私としては、財産目当てで悪に徹したブライフィルや、娘を財産家と結婚させるためには相手を選ばないソフィアの父ウェスタン氏の方が人間臭くて好感が持てた。2016/04/15
Ryuko
26
やはり大団円ですね。トムの出自は意外とも思えるが、読み返したら、あぁそうだったのか、、と思うような気もする。ジョウンズは、いい人間なんだと思うけど、節操がない。そこがコミカルで、楽しむところなのだろうけど、現代の価値観ではあまり面白いとは思えないかもしれない。各章の冒頭に作者のまくらが入るスタイルの小説。ときにうなずかされ、ときに冗長でもあったが、著者の語りが全面にでてくるこの小説にはとてもあっていると思う。2017/11/11
みつ
22
この巻に至って、どこまで引き伸ばすのかと思わせた物語は一挙に結末へ。ソファイアとある種の名コンビと思われた従者オナー夫人の離反、フィッツパトリック氏との諍いがもたらした災難と、二人を巡る状況はますます危機に陥る。ここから大団円までは一気呵成で、新たな事実が次々に明るみに出る。最終巻冒頭で、作者は「今までのようなふざけた観察などをしている余地はない。」(p175)と断るぐらいだから、わかってやっていたのか!とツッコミたくもなる。ただ、この脱線部分こそが、単純な勧善懲悪に陥らないこの本の生命力の所以であろう。2021/07/12
ソングライン
21
ベラストン夫人の所に、かくまわれるソフィア、彼女の滞在場所を突き止めるジョウンズですが、ベラストン夫人と止むを得ず深い関係になってしまい、それがソフィアに知られることに。また、暴力事件に巻き込まれるジョウンズは収監の身に。絶望のジョウンズですが、彼が施した善行に感謝する人々の行動により、ジョウンズへの疑い、偏見が覆り、ブライフィルの悪行が暴かれる後半は、心地よい一気読みです。女性への欲望が時に身を危険にさらすも、他者への無償の行動を厭わない主人公に魅せられる物語でした2021/01/20
マッピー
18
女にだらしないこと以外は、眉目秀麗、清廉潔白、気前良し。こんなに素晴らしい人はほぼいないと思われるのに、次から次へと不幸に見舞われる。生涯の恋人と思い定めたソファイアには絶縁を言い渡され、因縁をつけてきた男を振り払った拍子に大けがを負わせ、殺人犯として絞首刑を待つばかり…のところで残り50ページ。この長い物語の落としどころはどこか?・・・やっぱり大団円じゃない?じゃあどうやってそこに持って行く?いやいや、力業ですな。一気呵成に読み終えて、満足のため息をつく。やっぱりイギリス文学おもしろいわ~。2020/09/12
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