出版社内容情報
花ほころび,そよ風吹きそめる四月のある日,身分も職業もさまざまな二九人の巡礼がサザークの旅籠に顔を合せた.当時のイギリス社会の縮図というべき顔ぶれが,カンタベリーへの道中,順番に話をすることになって…….中世イギリス最大の詩人チョーサー(一三四〇頃―一四〇〇)の代表作.バーン=ジョーンズの端整な挿画を収載.
内容説明
五度結婚したバースの女房が明かす女心の本音。互いにけなし合う托鉢僧と召喚吏。学僧が語る貞女グリゼルダの受難。さらに貿易商人、近習、郷土、医者、免罪符売り、船長、尼僧院長が話した後、作者チョーサーも一枚加わり物語を披露する。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
71
カンタベリーへ行くまで、階級が違ういろんな人の話が続くが、騎士の結婚相手の容姿と性格についての『バースの女房の話』、気高い心についての『郷土の物語』、作者のチョーサーが語る『トパス卿の話』は宿の主人につまらん話と言われる楽屋落ち!。特に『学僧の物語』は侯爵が自分の妻に試練を与える話でそこまでしなくてもと思える点が印象に残る。最後はハッピーでした。お後は(下)へ。2023/05/12
syaori
27
巡礼の一行は順調に進んでいきます。一つの物語が終わると彼らの感想や掛け合いがあったりして、勝手気ままな巡礼たちを眺めるのも楽しみでした。物語は、托鉢僧が召喚吏をやり込める話をしたと思ったらお返しに召喚吏が托鉢僧を愚弄する物語をしたり、貞節な若妻の物語の後に盲目の夫の頭上で間男と事に及ぶ若妻の物語があったりというふうに進んでいって、その対象の皮肉さにニヤニヤしたりしました。この巻では作者も物語を語るのですが、最初の話はダメだしを食らう厳しさ! 次のメリベウスの物語はちょっと冗長な感じも、と思いつつ下巻へ。2016/07/04
Tomoko.H
8
バースの女房の前置きが長すぎ。ほとんど文句だけど、女はすべてあらゆる点において悪、みたいな考えがちらほら出てくるところをみると、蔑ろにされてた部分もあるのかな。メリベウスの話は、ほとんど説教でしょ。よくみんな黙って聴いてるもんだ。托鉢僧、召喚使、貿易商人の話は馬鹿話系。学僧の話は、ペローの『グリゼリディス』とほとんど同じだ(ペローのが後)。上巻の料理人の話もそうだけど近習の物語、どうして途中で止めちゃうの。郷士と免罪符売りの話が気に入った。この教訓的な話をした免罪符売り自身は最低の人間だってとこも笑える。2016/08/24
ミコヤン・グレビッチ
6
中巻は夫を五人迎えたという「バースの女房」が女性の本音を語る段から始まって、いずれ劣らぬ秀逸な話が続く。そして、この中巻の最後には、なんと著者のチョーサー自身が登場して話者を務める。しかし、最初の「トパスの話」はホスト役の宿屋の主人に「もうやめてくれ」と打ち切られ、それではと始めた「メリベウスの物語」も(私に言わせれば)さほど面白くないのは、いったいどうしたことか。もしかして、これは屈折した自己韜晦なのだろうか。だとすれば、乾いたユーモアのセンスにただ脱帽するばかりだが、そのあたりが微妙な感じもまた一興。2023/03/31
roughfractus02
6
巡礼話だが、登場人物たちは巡礼の目的でなく、自らの経験や信条を語る。ローマの神々、鳥と話す指輪、妖精の女王が登場する話には土着的な宗教の伝承が入り込み、不貞、結婚、殺害等のテーマを巡るアイルランドやオリエントの神話、『薔薇物語』、『デカメロン』から採られた話には、ボッカッチョ同様の教会批判が滲み出る。5度結婚したパースの女房がアブラハムやヤコブやソロモン王の例を引き合いに自己弁護をするとき、『聖書』は宗教裁判の時のように判例扱いされ、それに対して貞節を勧める学僧の話の最後では、作者が登場して批判を加える。2019/10/16