内容説明
「諷刺詩」と訳される「サトゥラ」はもともと「ごた混ぜ」「寄せ集め」を意味したとされる。エンニウス、ルーキーリウス、ホラーティウスを経て、ペルシウス(34‐62)とユウェナーリス(67頃?‐138頃?)によって、このラテン文学固有のジャンルは豊かな結実を見た。ローマ帝政期・白銀時代の二大諷刺詩集を1冊に集成。
目次
諷刺詩(ペルシウス)
ペルシウス古伝
諷刺詩(ユウェナーリス)(なぜ諷刺詩を書くのか;性的な倒錯者たち;都のさまざまな災い;皇帝と大魚;かしらと子分;ローマの女;知識人の惨めな生;正真正銘の貴族;陰間の嘆息;人間の願望の空しさ;質素な生き方;友の生還を祝う;罪と罰;父親と息子;アエギュプトスの人食い事件;歌;ローマ兵の特権)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
viola
8
ううむ・・・確かに、面白くはない!ですね。しかし、「興味深く」はあるのが面白いところ。ネロへの風刺が辛辣。ペルシウスの『風刺詩』はちょっとで、殆どがユウェナーリス。読み物としては、古代ローマならオウィディウスの方が面白いなぁ。『恋愛指南』(まさに昨日買っちゃいました)を薄めたような香りがして。風刺詩と訳される単語は元々「寄せ集め」を意味するそうで、脈絡はあまりありません。異常なまでにオレステスばかりが頻出するのはなぜ?いつの時代も、「昔はよかった」「最近の若者は」「年寄りを敬え」なんですねぇ・・。2012/10/23
ラウリスタ~
8
ふむ。主題は俗悪極まる。帝政ローマの堕落を告発するってものだから、読んでてそんなに楽しいものじゃない。当時の女たちでどれほどハレンチだったかとか語られてもね。意外にもアウグスティヌスら初期のキリスト教では良く読まれたとか、ローマを悪の大国として描いたこの手の作品はキリスト教からすれば意外と使える作品だったのだろう。ルソーも読んでたらしい、どこに興味を持ったのだろうか。それはそうと、現代においては流行る気配を感じないこの本を翻訳出版したことが凄い。国原先生お疲れ様です。もう86歳?凄すぎるな。2012/10/06
有沢翔治@文芸同人誌配布中
4
「パンとサーカス」「健全な精神は健全な肉体に宿る」などの出典で知られるローマの詩人、ユウェナリース。ホラティウスを経て、社会諷刺の詩は彼で結実する。後世、ゲーテやカントなど多くの詩人や哲学者に愛好された。ローマ帝国の社会情勢を詠んでおり、現代日本と重なるところがあるだろう。http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51519201.html2021/06/17
壱萬弐仟縁
4
ラテン詩の父エンニウスが雑詠をして諷刺詩と比ゆ的に用いた(解説381頁)。「この世の憂悶、辛苦のいかに空しく甲斐なきことか」(12頁)。俗世間、無常観ともつながる気がする。他でも指摘して重複承知だが、日本より千年ぐらいは早く、記録が残っているのが先進的。「家庭教師のしつけに怯えていた私」(46頁)とあるが、現代はビジネスなのであり得ないが、学習習慣上、しつけは家族の協力を得て改善していく必要はあるだろう。苛斂誅求(かれんちゅうきゅう=重税取り立て)で追放されたマリウス(80頁)は現代の増税論者に似るかも。2013/03/08
Hotspur
2
モンテーニュの延長。マクロの叙事詩に対して、ミクロの風刺詩。面白い歌もあるが、概して人名を中心とした馴染みのない固有名詞の奔流に押し戻されて入り込みにくい。2020/01/10