出版社内容情報
美貌の少年奴隷をはさんで争いながら南イタリアを放浪する二人の青年を中心に,好色無頼の男や女が入り乱れる.小説『サテュリコン』はまさに古代ローマの爛熟が生み落した「悪の華」だ.とりわけ,奴隷あがりの成金富豪が催す《トリマルキオンの饗宴》の場面は古来有名.セネカの諷刺短篇『アポコロキュントシス』を併載.
内容説明
美貌の少年奴隷をはさんで争いながら南イタリアを放浪する2人の青年を中心に、好色無頼の男や女が入り乱れる。小説『サテュリコン』はまさに古代ローマの爛熟が生み落した「悪の華」だ。とりわけ、奴隷あがりの成金富豪が催す〈トリマキオンの饗宴〉の場面は古来有名。セネカの諷刺短篇『アポコロキュントシス』を併載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
41
残っているのが14~16巻(抄録)だけらしいので、途中から始まって途中で終わるのですが、十分すぎるくらい享楽にふける当時のローマの雰囲気を楽しめます。エンコルピオスと美少年ギトンが放蕩にふけりながら旅をして、あちらで痴情のもつれから、こちらで愛欲絡みの騒ぎを起こす物語は、淫蕩で悪徳にまみれていますが、奔放で明るくて影がないのでつい彼らの放蕩ぶりを楽しんでしまいます。趣向を凝らした料理と、高尚さが欠如した会話が宴会を盛り上げるトリマルキオンの饗宴は読み応えがありましたが、その後の旅も万遍なく楽しみました。2017/02/22
藤月はな(灯れ松明の火)
39
『クォ・ヴァデス』を読んでいた時に父から「ペトロニウスの書いてフェリーニ(監督)が映画化した『サテュリコン』があるけど、読むか?」と尋ねられ、読む。『クォ・ヴァデス』では政治では冷静で趣味では情熱的な求道者として描かれたペトロニウスが書いたのは、男色、スカトロ的SM、不倫、下克上、3P、獣姦、乱交満載のスキャンダル小説だった!古代ローマはとんでもないド変態だったの!?しかも解放奴隷とイチャイチャしていたら巨大で絶倫の親友に寝取られ、手違いで奴隷へと転落した主人公というハード設定。お尻に香辛料は詰めないで!2017/07/21
傘緑
23
『アポコロキュントシス:神君クラウディウスのカボチャ化』「醜悪の冬は豊穣の秋のありがたい豪奢をつみとっていた」ハロウィーン、それはクリスマスを祝うには邪悪すぎるが、(血の)バレンタインには善良すぎる、そんなネロやカリグラといった最下層の悪魔に成りきれないそこそこの悪い子(基準はバート・シンプソン以上カートマン以下)が、ネロの父親でありながら中途半端な悪行ゆえに死後にカボチャとなった、カボチャ大王ことクラウディウス帝にプレゼントをたかる卑しい子の夜である。ちなみにライナスはいつも書類選考でふるい落されている2016/10/30
かんやん
22
解題に「古代文明の爛熟と貴族社会の虚無と倦怠を土壌にし」云々とあるけれど、別にこれぐらいの放蕩・乱行はノーマルかと思われる(その表現が許されるかどうかは文化による)。叙事詩にも悲喜劇にもなり得ず、説話のようなオチもなく、ダラダラ続くものが小説になったとするなら、そのテーマはやっぱり放蕩・乱行だったのではないか、と。どちらもダラダラしているし。パリアポス神の女祭司との乱行やトリマルキオンの饗宴などの描写は、やはり散文のフィクションのみが持ち得るような面白さがある。散逸した中でよくぞ残っていてくれたなあ、と。2021/03/12
サアベドラ
9
ローマ版好色一代男、たぶん。両刀使いのお兄さんが、巨根の友人に美少年の彼氏を寝取られてピーピー泣いたり、成り上がり解放奴隷(トリマルキオ)の超豪華パーティーに招かれて自慢話にウンザリさせられたり、変態性癖のご婦人を満足させるべく必死に精力増強にいそしんだりする話。全体としては、風刺小説というより変態ピカレスク小説といった方が正しいんじゃないかしら。現代人からみると完全に変態ギャグ小説ですけど。本来は現存部分の5倍以上のヴォリュームがあったそうで、完全に残っていたらだいぶ印象が変わっていたんでしょうね。2010/03/04