出版社内容情報
トロイヤの英雄アエネアースがローマ帝国建設の基を築く顛末をうたった叙事詩「アエネーイス」の口語韻文訳である.作者ウェルギリウス(前70‐前19)をしてローマ第一の詩人たる名声をほしいままにさせた大作であり,抒情的表現にも巧みでラテン詩歌の最高位を占め,ダンテをはじめ後世のヨーロッパ文学に大きな影響を与えた重要な古典である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
49
最後はアエネーアースがアルデアの王トゥルヌスとの対決に勝利することで幕を閉じる。アエネーアースが支配した土地は神の意志と宿命によって発展することを約束された地として描かれている。この詩が書かれた当時の古代ローマ人も満足する内容だったに違いない。訳文ではアポロンが「アポルローン」(ルの部分が小さい字になっている)となっていたのには訳者のこだわりを感じた。また省略されることも多い長音がしっかり表記されている点には好感が持てた。やはり「イーピゲネイア」であって「イピゲネイア」では発音しにくいよなと思った。2023/09/15
syaori
40
ラティウムに到着した一行を待ち受けていたのはルトゥリー族の王トゥルヌスとの戦い。ただアエネーアースがこの地に新トロイアを建国するのは運命によって定められている、神意でも覆すことはできない事実。その運命に逆らい、また流されて戦いに身を投じていく戦士たちには、大きな運命を前にした人のはかなさを思わずにはいられません。だからこそ、詩人も彼らの勲を絢爛と歌い上げずにはいられなかったのでしょうし、彼らの生き様は美しく思われました。同時に端々に窺われる、自身も内乱の時代を生きた詩人の平和への願いも強く心に残りました。2018/03/23
ぽんくまそ
13
ローマ建国の祖・主人公アエネーアスに挑んで死ぬメーゼンティウス父子の悲壮、敵方の女戦士カミルラ(米国の女子プロレスラーをイメージ)の奮闘と戦死、そして敵の主将トゥルヌスが愛と誇りをかけてアエネーアスに挑むことを宣言し、アエネーアスもまた戦場で敵兵を殺しまくりながらトゥルヌスを捜し求める。作者は死ぬときに草稿を焼いてほしいと言ったらしい。ずいぶん年月をかけて作ったわりには、ホメロスにはとうてい及ばなかったもんね。特に漂流の場面なんか、そうだった。でも、作者の願いを一蹴して出版させたアウグストゥスが正しいよ。2015/09/25
てれまこし
9
だから古代叙事詩は善悪の闘いという形式をとらない。それは英雄同士の争いである。敵は悪とういうより有力な神に愛されてないだけであって、やはり宿命を全力で受け止める英雄であるのには変りがない。英雄同士が激突するから神々を巻き込む壮大ドラマとなるのである。悪として蔑まれるのは敵・味方に関わらず生まれの卑しい者=弱い者=卑怯者たちであり、そんなものたちを英雄は本気で相手にしないのである。バイロンの革新は、キリスト教的悪を媒介して、英雄的な悪(というより「悪の凡庸」に対する「悪の英雄性」)というものを提示したこと。2019/11/07
ホームズ
8
アイネーアスのイタリアでの戦い。『イーリアス』『オデュッセイア』よりも少し読みにくい感じがして読むのは大変だった。神々の名前もローマ風になってしまってしまって誰が誰だか分かりにくかった。2012/06/24
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