出版社内容情報
アイヌに伝わる数々の昔話のうち,とくに「パナンペ説話」を選んで訳出したもの.巧智を発揮して成功するパナンペをみたペナンペは,それを羨んで真似するがかえってひどい目にあうばかり.野趣に富む痛快な物語十五篇を収める.併収は,人間くさいおばけが次々と登場する「えぞおばけ列伝」. (解説 関 敬吾)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
明智紫苑
17
パナンペとペナンペのシリーズって、まさしくアイヌ版『えの素』だなぁ(笑)。笑い過ぎにはご注意。2019/04/02
春風
10
アイヌに伝わる民譚『パナンペペナンペ説話』を15編収録し、えぞおばけ列伝が付載される。これには艶笑譚をも採録しており、尾籠話を尽く網羅した民譚を味わえる。パナンペペナンペ説話は、本邦でいう花咲爺さんのような「正直爺さんと意地悪爺さん」と構造を同じくする話。しかし聞き手のこどもウケを極めたからか、下品な単語を網羅しているのではないかというレベルで、下ネタが頻出する。しかしてその想像力には常に驚き入る。ペナンペの爺さんはラストシーンで、説教じみた台詞を残し話の幕は閉じるが、どうにも説得力は感じられぬ…2020/11/23
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇵🇸🇾🇪🇱🇧🇨🇺
8
再読。左綴じの横書き。左ページにアルファベット表記のアイヌ語、右ページに日本語訳。最後の方に註解付き。「えぞおばけ列伝」は日本語のみ。 アイヌの知里真志保が昭和10年に発表した本。本人が断っているが、彼自身は既にアイヌとしての伝統とは縁遠い中で育ち、ドイツ語や英語と同じ異国の言葉としてアイヌ語を学んだ。その上で、もはやアイヌは和人と同化して事典に載っている様な生活を遥か昔に捨てており、それを肯定的に捉えている。もはや彼らにとって伝統的なアイヌの生活は屈辱にまみれたものでしかない、と。→2025/04/12
fumi
7
善良な者が富み、それをまねた不徳な者が罰せられる「隣の爺」ジャンルの「パナンぺとペナンペ」含む物語15篇、それに妖怪や精霊のたぐいの説話を集めた「えぞおばけ列伝」に艶笑譚を収録したもの。叙事詩ユーカラが能ならパナンペ民話は狂言のようなものらしく、長い叙事詩の語りの合間に挿まれ場を笑わせたり、子どもに教訓を授けたりするものらしい。巻末からが本番と言いたくなるほど、注釈にはアイヌ語や説話の背景の解説がかなり詳かに書かれている。金田一京助による序文のセンチメンタリズムにツッコミを入れる、編者の後書きも読ませる。2020/05/23
せっぱ
5
パナンペとペナンぺが主人公の物語が13話。態度が悪いペナンぺが損な役回りを引き受け続けるので、二人とも笑って終わる13話目はある意味ハッピーエンドとも。この順で語られていたわけではないだろうけど。艶笑談も収録されているが、この部分のみならず全体に大らかなエピソードが多い。「淫魔の話」中の歌に「やわはだのあつきちしおに…」と訳を当てているのが面白い。昭和12年刊行の集に昭和36年刊行の「えぞおばけ列伝」が付されたもの。編訳者の一高進学時の経験談に、当時のアイヌにむけられていた目が感じられる。2017/12/17