出版社内容情報
「死ぬ日まで天をあおぎ/一点の恥じ入ることもないことを」――戦争末期,留学先の日本で27歳の若さで獄死した詩人,尹東柱.解放後,友人たちが遺された詩集を刊行すると,その清冽な言葉が若者たちを魅了し,韓国では知らぬ者のない「国民的詩人」となった.詩集「空と風
内容説明
「死ぬ日まで天を仰ぎ、一点の恥じ入ることもないことを」―。戦争末期、留学先の日本で27歳の若さで獄死した詩人、尹東柱(1917‐1945)。解放後、友人たちが遺された詩集を刊行すると、その清冽な言葉がたちまち韓国の若者たちを魅了した。これらの詩を「朝鮮人の遺産」と呼ぶ在日の詩人金時鐘が、詩集『空と風と星と詩』をはじめ全66篇を選び、訳出した。原詩を付す。
目次
『空と風と星と詩』(序詩;自画像;少年;雪降る地図 ほか)
『空と風と星と詩』以外の作品から(白い影;いとしい追憶;流れる街;たやすく書かれた詩 ほか)
原詩
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
133
淡くて切なくて霞んでいて儚い。己が誰であるか何者かも考えず、ただ心を無にして空と風と星と詩を感じていたい。映画も合わせて観て心に留めておきたい。金時鐘の慕う心が兄弟のようでまた麗しい。2020/01/11
新地学@児童書病発動中
87
若くして獄中で命を落とした韓国の詩人の詩集。英国の詩人のキーツを思い出した。より良く生きたいという願いと、良い詩を書きたいという願いが詩の中で一つになっているところが素晴らしい。ここに収められた詩の数々は心の中に溜まった滓を浄化してくれる力を持っていた。お気に入りの一部をご紹介。「星を歌う心で/すべての絶え入るものをいとおしまねば/そして私に与えられた道を/歩いていかねば」2014/07/26
こばまり
46
茨木のり子『ハングルへの旅』から。素朴で悲しい作品が多い。「夜」「たそがれ」が好み。原詩も収められており、ハングルで読めたらさぞや素敵だろうにと憧れる。2022/04/09
Y2K☮
35
今月のポエム。荒ぶる感情を曝け出す、あるがままの己を自由に叩きつける。それこそが詩だと考えるなら、本書は味が薄過ぎるかもしれない。ましてや戦時中。留学先の日本で戦争が終わる数か月前に獄死した(ふとアンネを連想)という経歴にもそぐわない。でも読了して納得した。この人はいわゆる抵抗詩人とは異なる。ただ素朴で平穏な日々を送りたかっただけなのだと。マヤコフスキーみたいな文学で国を変えるとか体制を打倒するなんてタイプじゃないのだ。こういう人を逮捕して死なせてしまう治安維持法の粗さと不条理を噛み締める今日は8月6日。2019/08/06
Y
27
すごくきれいでどんよりとした心がだんだんと晴れ渡っていくような気がした。読んでいくうちに自分の中に微かに残っていた無垢な心が息を吹き返した。描かれているのは素朴な田舎の風景や夜空の星や朝の空気。一つ一つは見慣れたどこにでもある題材だけど尹東柱がとらえた世界はあまりにもきらめいていた。だけどその輝きは読む人を孤独にしない。会ったことのない人だけど読んでる間中彼のまっすぐで澄んだ瞳を想像した。こんなに素敵な詩を書く人が若くして理不尽な理由で殺されたことが心から悔しい。彼の詩をもっともっと読んでみたかった。2020/06/21