出版社内容情報
白居易,字(あざな)は楽天.位は人臣を極め,当時の詩壇を席巻し,のこされた詩数は唐代随一.古来日本で最も愛唱された大詩人(772-846)の詩から,世の不正を憤る諷諭詩,日々の幸せを慈しむ閑適詩,玄宗と楊貴妃の愛の賛歌「長恨歌」,落魄の女性を相憐れむ「琵琶行」
内容説明
白居易、字は楽天。位は人臣を極め、唐代の詩壇を席巻し、古来日本で最も愛誦された大詩人(七七二‐八四六)。世の不正を憤る諷諭詩、日々の幸せを慈しむ閑適詩、玄宗と楊貴妃の愛の賛歌「長恨歌」、名高い「琵琶行」等々、清新多彩な作を生涯に沿い精選。上巻には六十九首を収録。
目次
1 登第以前―大暦七年一歳‐貞元十六年二十九歳
2 長安時期(一)―貞元十六年二十九歳‐元和十年四十四歳
3 江州時期―元和十年四十四歳‐元和十四年四十八歳
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
362
9世紀半ばに渡来した『白氏文集』は、『源氏物語』をはじめ当時の王朝文学に絶大な影響を与えた。それはそうだろう。盛唐の輝かしい最先端の文学が日本に舶載されたのだから。当時の文人たちの憧れの度合いは想像を絶するものであったに違いない。中でも最も人気のあったのが「長恨歌」だろう。それは、恋と喪失の物語として、そもそもが普遍的なテーマをあつかっており、浪漫的で馥郁たる香り(エキゾティックでもあった)に包まれていたのだから。表現は、今からすれば常套的なフレーズの連続なのだが(それだけ人口に膾炙していた証でもある)。2020/01/13
新地学@児童書病発動中
113
本当に素晴らしい詩ばかりで、途中で読み終わるのが惜しくなり、少しずつ読んだ。白楽天は天性の詩人だと思う。この詩人の手にかかれば、どんなことでも詩になるし、詩を書くことに憑りつかれていた詩人だった。訳者はそんな態度のことを「詩に殉じる」と書いているが、その通りだと思う。「長恨歌」のような長い詩は色彩豊かで物語性があり、まるで歴史小説のように読める。それでいて、詩としての技巧も凝らされているので、天才にしか書けない作品だ。「夜雪」のような短い作品も情景が鮮やかに描かれて、鮮烈な印象を残す。詩人の中の詩人だ。2017/05/11
南北
45
日頃漢詩に親しむ機会は少ないが、それでも知っている言葉が出てくるということはそれだけ白楽天の詩が日本人に好まれてきたためだろう。「比翼の鳥」と「連理の枝」や源氏物語の須磨の巻で光源氏が口にする「二千里の外故人の心」、さらには枕草子で有名な「香鑢峰ほすだれを撥ねてみる」等の言葉が出てくると古文の世界と親密な関係が築けたような気がする。上巻は白楽天の若いときから中年の頃までの作品が収められているが、下巻も引き続き読んでみたい。2023/01/20
きゃれら
23
大河ドラマから、源氏物語、枕草子と手に取り、いよいよ当時流行っていたような白居易にまで手を出してみた。秀才バリバリエリートが左遷された先で嘆いたり悟ったりを歌う。連理の枝や香炉峰の雪の元ネタが出てくると、おおお、と思う。漢詩はちゃんと本を買って読んだのが初めてで、これまで杜甫や李白と区別できてなかったが、ちょっと味わいが違う。自負と真面目さが個性らしい。下巻は少し休んでから読むつもり。2024/07/30
春の夕
7
日々漢字とひらがな・カタカナを組み合わせて用いる言語に慣れ親しんでいるからこそ、漢字だけであらわされた詩をよむと、そこに込められた感情が直接的に伝わってくるようで戸惑った。事新しく言うまでもないが、馴染み深い筈の言葉よりも当惑したのは、理解が及ばないことに対峙したときの自分のあり方や、自分の心に気づく過程とによく似た感覚を思い起こさせるからだと思う。そのような事もあり、心は動かないが、詩と共に過ごした時間は決して悪いものではなかった。2022/06/20