出版社内容情報
唐宋伝奇の源流は六朝時代の怪異譚にある.唐代になると,意識的に奇異なものを追求し修辞にも凝って,ここに文学と呼ぶにふさわしい創作ジャンルが成立する.その面白さは,幻想を追っているようで実は深く人間の本質をついているところにあり,そうした佳篇と,日本文学に影響を与えた作品をえらび収めた.
内容説明
『南柯の一夢』の主人公は官僚を嘲笑する自由人である。そういう男が役人になって栄達の限りをつくし、得意と失意をたっぷりと味わう。味わったところで夢からさめ、槐の根もとを堀るとどうだろう、夢みたとおりの小さな蟻の王国があったのだ゛唐代伝奇の面白さは、幻想を追っているようで実は深く現実の人間の本質をついているところにある。
目次
1 白い猿の妖怪―補江総白猿伝
2 倩娘の魂―離魂記
3 邯鄲夢の枕―枕中記
4 妖女任氏の物語―任氏伝
5 竜王の娘―柳毅
6 紫玉の釵―霍小玉伝
7 南柯の一夢―南柯太守伝
8 敵討ち―謝小娥伝
9 鳴珂曲の美女―李娃伝
10 夢三題―三夢記
11 長恨歌物語―長恨歌伝
12 鶯鶯との夜―鶯鶯伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
61
中国の伝奇小説を収録した一冊。中国の夢の話というと必ず言及される「邯鄲夢の枕」「南柯の一夢」がやはり白眉。他にも異類婚姻譚「妖女任氏の物語」や日本の昔話で聞いたような話も含まれる「夢三題」と、日本の話における中国の影響を感じさせるような話も多し。このような現実と皮膜一枚隔てたような話がある一方で、「敵討ち」や「鶯鶯との夜」等の現実に沿った話も載せられており中国伝奇小説の幅広さの一端を垣間見せてくれるようであるし。中国というだけではなく、人間に関する普遍性を有しているが故にここまでの影響を与えているのかな。2019/08/12
しゅてふぁん
44
楚辞や遊仙窟を思わせる幻想的な話が多かった。作中に白居易と元稹の詩が出てくる『長恨歌物語』と『鶯鶯との夜』は必読。詩を基に物語を書いたものと、物語を詩にしたもの。どちらも幻想的で美しい。散文が詩になると、こんなにも豊かな世界になるのかと思わずため息が出た。中国の古典に興味がある方にはおすすめの一冊。2020/07/04
NORI
22
平安文化にも影響を与えた「長恨歌物語」目的。それも含めた12の中国の昔話を収録しているが、先日読んだ駒田信二「中国神仙奇談」「中国怪奇物語」シリーズと収録話が重複しまくっており、半分以上知っている話だった。 日本語として若干不自然な表現が散見される。個人的な感触としては、駒田信二さんの訳の方が読みやすかったかも? 「長恨歌物語」は、白居易(白楽天)の漢詩「長恨歌」はどういうシチュエーションを表現したものか解説した物語といったところ。影響を与えているはずの源氏物語を再読するときの参考にしたい。2024/05/10
還暦院erk
11
図書館本。予想以上の面白さ!とにかく読んでみてとしか言えない。紫式部がこの手の伝奇物語に親しんでいたみたいというのも何か嬉しい。本作品集では、12.鶯鶯伝のヒロインの文才と哀しくも誇り高い恋の顛末が心に迫った。相手の主人公は、婚前交渉までは熱心だが以下略という「ありがち」な若きエリートで、「当時の多くの人は、張生は過失をつくろうのが上手だと賞賛した」なんて評されてるけど褒められてるんだかどうだか()。11.長恨歌伝には白居易の原詩が出てくる。訳は付いてるものの白文読解難易度高し!だがさすがの完成度!2019/12/11
屋根裏部屋のふくろう🦉
10
『邯鄲の夢の枕』や『南柯の一夢』のように、夢にまつわる話が多い。 自分の現在の身の上を嘆き、あぁこの先どうなるのだろうかと思いながらウトウト眠る。そうすると自分のこの先の出来事が夢になって出てくる、なーんて面白そう。だけど大変恐ろしくもあるね。でも、ちょっとだけ、チラ見でいいので見てみたい。長恨歌にまつわる話も興味深し。2019/04/03