出版社内容情報
五四時代を背景に大家族の崩壊過程を描く.新旧思想の接点に立って苦しむ覚新,要領よく生きようとする覚民,封建制に反抗する覚慧,この兄弟を中心に,多くの従姉妹,美しい下婢鳴鳳等,大家族の腐敗がリアルに描かれている.愛人鳴鳳の死に絶望し,新しい生を求めて出奔する覚慧に,作者の激しい革命への情熱が託されている.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
23
辛亥革命が起こり、陳独秀たちが『新青年』などで新しい思想を啓蒙していた時代。舞台となる高家は旧家で、祖父を家長に一族が大邸宅で暮しています。この一族の家長の長男の息子で覚新・覚民・覚慧という新しい教育を受けた3兄弟を中心に物語が展開していき、儒教道徳や慣習に縛られる「家」が新しい思想を持った彼らの目や立場を通して描かれます。もちろん兄弟の立場は三者三様で、それぞれの立場や理想に応じた悩みや苦しみがあり、大変先が気になります。古い制度の下で苦しみ、凄惨な笑みを浮かべるしかない女性たちにも注目しつつ下巻へ。2016/08/23
Tomoko.H
8
目下の者は跪き、上の者に絶対服従!ばりばり旧弊な大家族高家の、覚慧の兄弟を中心とした人間模様。宴席での知的なゲームとか、野蛮な竜灯など文化も生き生きと語られ、また各々の感情も具に描かれて読み応えがある。思うに任せない自分の将来の闇と、立ち向かう勇気との間に揺れる若者の心がよく伝わる。仕事も結婚相手も勝手に決められて従うしかない覚新、かわいそうだけど、もっと哀れな元恋人梅に自分勝手な想いを言うとかどうなの…。そして召使いは奴隷、人権なし。紳士階級にも自由はないようだけど、比較にならないよね。2022/06/08
コーキ
4
「家」に生まれ、「家」に愛され、「家」に縛られ、「家」に殺される―――。この小説では辛亥革命から数年を経た中国の上流家庭が描かれる。内乱や社会の変化が丁寧に表現され、歴史の資料としても楽しめる名作である。―――時代の荒波に揉まれながら必死で自分の人生を生きようとする兄弟は、それでも「家」から逃れることは出来ないのか?……もどかしさを抱えながら下巻に移る。2015/05/10
おとや
2
表向きは身分違いの恋愛ものの要素も強いが、社会構造が激変する時代を背景に、上流階級の人々の苦しみを描いているのと同時に、彼らに使える下層の人々の苦しみをも描いていることに意義がある。内容に覚えがあると思ったら、以前本作を陳西禾監督が映画化した56年の映画を見たことがあったのだった。2012/04/22
耳
1
おもしろい。まず訳が良い。日本語としてとても完成されている。元々日本語で書かれたもののように美しく自然でリズムも良い。すごい金持ちの家の話で、家に花園まであってどれだけ広いんだろう?と思った。あと奥様方はずっと麻雀してる。 古い家の辛さを書いているが、琴が理想と現実の間で悩んでいたりして(髪切るところ)とてもリアル。小説だからと悩まずにスパっと切れる人に焦点が当たってないのがよい。鳴鳳が死んだのは辛かった。結局誰も彼女を救えず、奥様もその時は同情するけどすぐ忘れてしまうのが当事者じゃなさをよく表している。2021/08/14