出版社内容情報
郭沫若(一八九二―一九七八)の活動領域は驚くほど多岐にわたるが,作家としては好んで歴史ものを手がけた.『歴史小品』は,老子・孔子・孟子・始皇帝・司馬遷など古代中国の名だたる人物のエピソードに材を得た八つの短篇からなる.登場人物の誰もが血と肉をそなえた生ま身の人間として歴史の靄のかなたからよみがえる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
27
1936年初出。「荘子 宋を去る」で、荘周は宇宙生成変化の原理を瞑想しながら、麻の種子が田圃に蒔かれる。あたたかい太陽の光にまもられ、おだやかな春の風に吹かれて、苗が頭を出す。苗が枯れてしんが麻になる。わらじにこしらえている。わらじは人に穿ききられると、何処かの どぶ(傍点)に棄てられるであろう。人間の一生も、こんなものではなかろうか。他人のために使われる道具になってしまっては、何の幸福もありゃしない(23頁)。2015/10/16
taku
12
歴史書等の記述を組み込んで小説にするのは、作者の手腕が問われるところ。聖人、偉人を人間臭く描いた裏話的なのも悪くない。私は始皇帝の最期と項羽の最期の話が好き。中華を統一した王朝の滅亡と、次の統一王朝誕生への転換点。解釈と内面描写に面白みがある。自分を凡人、大たわけと省みつつ李斯を罵る始皇帝はちょっと面白い。項羽については、杜牧が題烏江亭を賦したのもわからなくないが、天命が尽きたことを知った上での選択を潔しと考える。2025/07/14
CCC
11
歴史上の英雄・聖人もやはり人の子だった、みたいなノリの短編集。読みやすく、取り上げられているのも有名どころばかりなので入っていきやすかった。なかなか楽しめた。ただこの作品集、歴史人物を蘇らせて自己批判させているようなところもある。世にあまたある偉人聖人物語、英雄譚のアンチテーゼという面も強いかもしれない。2020/01/31
双海(ふたみ)
10
なぜ本書を買ったのか・・・謎。(つまらない本、というわけではありません)2014/06/03
Tomoko.H
7
老子の話は、大分趣が違うけど魯迅も『出関』に書いている。孔子の話も似たのを読んだことあると思ったけど、魯迅の同じ本には入ってなかったな、どこで読んだんだったか。司馬遷のは、中島敦『李陵』を思いだした、やっぱり「史記」への執念と怒りで生きていたのか。作家の解釈があるものの、古代中国の有名人物のエピソードがこのように残っていることに感心する。ちょっと恥ずかしいような話だったり、でも生き生きと描かれて故人はどう思うだろうねえ。2023/01/06
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